お役人に見てほしい
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年9月7日 07時41分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
心臓疾患で大工の仕事を失ったダニエル。支援手当の申請で、型通りの質問を受ける。
「帽子をかぶれるくらい腕は上げられますか?」「手足は悪くない、カルテを読めよ」「態度が審査に影響しますよ。我慢ができなくなって大便を漏らしたことは?」「こんな質問が続くと漏らすかもな」…。
冒頭のこのシーン(画面は音声のみだが)に象徴されるように、滑稽さや理不尽さへの静かな怒りが作品全体を覆っている。目の前の担当者は「提出書類は専用サイトから」、問い合わせ電話は1時間も待たされる。こんな「お役所あるある」に思わず苦笑してしまう。
舞台はイギリス。背景にあるのは、緊縮財政による合理化だ。福祉大国と思っていたイギリスの惨状は驚くほど。
当てにならない公的なサービスに対し、ダニエルは貧しい母子と助け合っていく。福祉の貧困化を声高に叫ぶのではなく、個人個人の目線で優しく温かく、切なくユーモラスにエピソードが展開する。しかし、問われているのは効率優先の現代的な行き方だ。人間の尊厳とは何なのか、その問いは重く、切ない。特に窓口担当のお役人にぜひ見てほしい。
イメージワード
- ・悲しい
- ・笑える
- ・泣ける
- ・切ない
- ・コミカル