レクター博士よりも悲恋の男女が涙を誘う
2020年8月23日 10時41分
役立ち度:0人
総合評価:
3.0
「羊たちの沈黙」の前日譚とも言うべき映画で、エドワード・ノートンがFBI捜査官として出演・主役を務めています。本作ではレクター博士のクレイジー度数が少なく、博士ファンは少しがっかりするかもしれません。
個人的には「悲恋物語」ではないかと考えています。「レッド・ドラゴン」とはウィリアム・ブレイクの絵画。これを見たダラハイドはそれまでは自分を束縛する祖母に屈する気の弱い男性でしたが、彼はブレイクの絵画にシンパシーを感じ自らを「レッド・ドラゴン」として連続殺人鬼として振る舞うようになるのです。
レクター博士は彼のトラウマを見抜き、FBI捜査官グレアムに示唆を与えます。しかし、ダラハイドにはたったひとり、愛する女性がいました。それは盲目の女性で、ダラハイドの姿を見ることなく彼を愛してくれた最初の女性です。ダラハイドは徐々に背中に入れた「レッド・ドラゴン」の刺青に支配され、殺人衝動を抑えられなくなりますが、この女性だけは守ろうとする姿はかなり泣けてしまいます。
もし、ダラハイドがごく普通の家庭で生まれていれば、恐ろしいまでの力の志向はなかったかもしれません。盲目の女性との愛も育めたでしょう。しかし、彼にはそんな運命はなかったのです。力に憑りつかれた彼は街を焼き尽くすドラゴンと化し、グレアムと対峙します。
レクター博士はこの映画では割と端役で、そこに不満を感じるかもしれません。ですが、このダラハイドの力と恋の物語は、見る側の心を必ず震わせることでしょう。