アルカトラズからの脱出
誰ひとりとして脱獄に成功したことのない刑務所―――アルカトラズ島。ここに一人の囚人が送り込まれた。彼の名はフランク・モーリス。所内で以前、別の刑務所で一緒だったアングリン兄弟と彼は脱獄計画の実行を決める……。あの『ダーティハリー』の名コンビ、ドン・シーゲル監督=クリント・イーストウッドが放つ、873日をかけた脱出作戦を事実に基づいて描く脱獄映画の秀作。
「アルカトラズからの脱出」を監督したドン・シーゲルは、この映画を撮る25年前に、実際にアルカトラズ刑務所を取材したそうです。 もちろん、この映画のためではなく、その頃、彼は「第十一号監房の暴動」という映画を撮っていたからなんですね。 サンクエンティンやフォルサムといった悪名高い刑務所も同じ時期に訪れ、なんとも憂鬱な気分にさせられたそうです。 この「アルカトラズからの脱出」は、1960年に起こった実際の事件を下敷きにしています。 当時、この島からの脱出は不可能とされていました。 警備が厳しく、海流が速く、水温が低いという三条件が揃っていたからです。 その刑務所に、クリント・イーストウッド扮するフランク・モリスという犯罪者が移送されて来ます。 ドン・シーゲル監督は、例によって、彼の素性や背後関係を明かしません。 モリスが脱獄の名人であり、それだからこそ、この島へ送られてきたという事実にのみ照明を当てるのです。 あとは刑務所内部の描写です。果たして、どんな囚人がいるのか? パトリック・マクグーハン扮する所長は、どんな性格なのか? 刑務所はどうやって囚人の人格を破壊するのか? 道具の調達はどうやって行なうのか? --------。 ドン・シーゲル監督は、実に無駄なく、こうした細部を語っていきます。 その語りに従えば、観ている私は、モリスの内部に導かれていきます。 と言うより、モリスとともに、脱獄のプランを真剣に練り始めるんですね。 誰を味方につけるか。時期はいつを選ぶか。監視の目はどう欺くか。 相棒選びだけは、やや説得力を欠きますが、他は文句なしに渋い。 ドン・シーゲル監督とクリント・イーストウッドの名コンビは、コンビを組むのは、この作品が最後となりましたが、隠れた佳作だと思いますね。
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