しっとりとした作品でした
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月3日 11時40分
役立ち度:0人
総合評価:
3.0
全体的に大きな盛り上がりもなく、しっとりとした感じで終わった印象があります。設定は、ホームズが93歳なので当然とも言えますが。その人間の老いを真っ向から映した内容と思いました。鋭い思考力を発揮して事件を次々と解決してきたホームズも、その老いと忘却との闘いの日々なのが哀れさをかもし出していました。
しかし、その内省の中で、変える事の出来ない過去の過ちと向き合う事でわずかながらも成長をし、同じように過去に囚われている哀れな日本の男性に、救いの手紙を書けるまでになるのが、一筋の灯のように感じました。
ずっとホームズの傍らには、肯定的に接してくれる少年と厳しい母親がいて、静かな日常に「動」をもたらせている所が良かったです。最後の方で、少年が蜂に刺され重体となり心配するホームズとその母親のシーンが、一番印象に残っています。まだ少年がどうなるか分からない時に、自分の財産を二人に引き継いで欲しいと言う事でも、実は二人を大切に思っていた事が伝えられ、更には少年の容態も回復して行くという、母親にとってはダブルで幸せな事が訪れ、ぐっと心の距離が縮まった感じがしています。廊下から息子の病室に入る時の、母親がホームズの手をしっかりと力強く握っている所にも心情がよく表れていました。
後にみんなでホームズのミツバチを笑顔で世話をしているシーンは、本当の家族の様で優しい終わり方に満足しています。