ドラゴン・キングダム
カンフーマニアで、孫悟空を夢見る17歳のジェイソン(マイケル・アンガラノ)。ある日チャイナタウンでギャングに追われた彼は、次の瞬間古代中国のとある村で目を覚ます。大酒飲みの男ルー・ヤン(ジャッキー・チェン)に危機を救われたジェイソンは、やがて白馬に乗ったサイレント・モンク(ジェット・リー)に出会い……。
我らがジャッキー・チェンとジェット・リーの2大カンフー・アクション・スターが、まさかの競演を果たしたという、それがロブ・ミンコフ監督の「ドラゴン・キングダム」だ。 この2人の競演を可能にしたのが、ハリウッド資本というのが不思議な縁のなせる業。 内容はへっぽこ異世界ファンタジー。 白人の気弱な少年の主人公が、カンフー映画を貸してくれる中華街の老人と関わっているうちに、異世界に迷い込み、現実世界に戻るため、ひょんなことから手にした如意棒を孫悟空に返さなくてはならないというものだ。 ジャッキとリーは、ファンタジーの世界において、少年と目的を同じくする旅の道連れとして登場する。 せっかく大スターが競演するのだから、白人の少年を真ん中に置いた生煮えファンタジーなどで少々がっかりするが、愛嬌のある童顔ながら、シリアスで悲壮感溢れるドラマがお似合いのリーと、テクニカルながらもコミカルな動きでユーモア感覚のあるジャッキーの、互いの持ち味が活きるような話というのもなかなか難しそうだ。 監督のロブ・ミンコフは、ディズニー出身で、「ライオン・キング」で知られ、「スチュワート・リトル」や「ホーンテッド・マンション」で実写映画に進出。 どうやらカンフー好きらしい。ファミリー・ピクチャーならそこそこ大丈夫そうだが、歴史的な作品を任せるのに適切かと問われたら、やっぱり不安が先に立ってしまう。 こういった、両雄並び立つタイプの作品で、この監督、しかもファンタジーなどというから、どうせろくなものは見られないという諦めをもって劇場に足を運んだが、期待値の低さゆえか、少なくとも作り手がジャッキーなり、リーなりに敬意を持って作っているということと、観客が観たいものをよく理解していること、それだけで好感を持ちましたね。 観客が観たいものといえば、もちろん、ジャキーとリーのカンフー対決だ。 この映画、2人が敵と味方に分かれるような脚本ではないが、ジャッキーの酔拳vsリーの少林寺、それぞれお得意のスタイルで激しいバトルを繰り広げるシーンが用意されている。 このシーンの演出も、短いショットを編集でつないで誤魔化す、いんちきアクションとは違う。 不満がないわけではないが、アメリカ映画としては頑張っていると思う。 因みに、この対決、最初の脚本にはなかったらしいのだ。 「せっかく2人が競演するというのに闘わないなんてのはダメだ」という監督の意向を受けて変更したらしい。 演出の腕前はともかく、観客の求めるものを理解した監督ですね。 だって、これがこの作品の最大唯一の見所ですからね。 もしこれがなければ、いったい何のための映画なのか、ということになってしまうところだった。
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