侮ってはなりません。無茶苦茶怖い映画です。
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年8月23日 11時19分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
冒頭から牢屋に入れられた、震える男が映し出されます。男の身体には黒い十字架がびっしりと描かれており、何かに恐怖していることがわかります。
彼は保険員のトレント。有名作家が失踪したと連絡を受け、調査を開始しました。失踪した村で、作家の小説を購入するトレント。その小説が存外面白く彼は虜になってしまいます。しかも、作家の居場所を暗示するキーワードも見つけ、その場所にまで追いかけたのですが……。
カーペンター監督作品ですから外しません。恐ろしいのは、「おかしいのは外側ではなく、自分だった」という真実が含まれているところです。一体どこからが夢だったのでしょう。単なる会社員のトレントは作家の世界の中に迷い込み、恐ろしい怪物から逃げ回った挙句、存在しない街にまでたどり着きます。そんな彼の行く末……実はそれが作家の作った新作の「小説」だったのです!
彼の自意識は崩壊し、恐れ、ついに冒頭のような姿となります。実は映画を観ていた自分達も共犯者なのです。彼の困惑する姿、不思議な世界に囚われていく様子、そして発狂……それら全ては小説家のもの。そしてそれはヒットし、こうして「映画化」されているのですから。
見ている側まで奇妙な世界に取り込む。これはカーペンター作品のポイントです。「遊星からの物体X」では、自分も憑りつかれているかもしれないという不安を掻き立てるなど、非常に共犯関係にされる可能性が高い作品を作り上げています。
そこが魅力なのですが、うっかり体力や気力のない時に見ると本当にいろいろと精神的にぐったりしますので、パワーのあるときに怪奇ワールドをお楽しみください。