個人的なシリーズ最高傑作
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年10月7日 15時27分
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総合評価:
5.0
50年、50作に及ぶ「男はつらいよ」シリーズの中でも
個人的には最高傑作と呼びたい作品です。
とにかく名シーンが多い・・・。
「女房も子どももいないから身軽だ」と言った寅次郎に、
博の父・飈一郎(志村喬)が語りかける
「庭一面に咲いたりんどうの花。」の件。
池内淳子さん演じるマドンナと庭先で語り合う際の美しさと
自身の寂しい胸中を理解して貰えない寅次郎の切ない後ろ姿
~夜風が吹きすさぶ寒空の下での寅さんとさくら(倍賞千恵子)の別れのシーン。
物語冒頭で出会った旅一座と、再開し共にトラックの荷台に乗って
旅立っていく爽やかなラストシーン。
そして、最も喜劇的な要素の強かった森川信さん演じる
初代おいちゃんの最後の出演作でもあります。
B級喜劇から国民的映画への脱皮を図り、見事に成功を収めた
初期「男はつらいよ」の集大成であり、
山田洋次監督、渾身の力作です。
ちなみ一般的にこのシリーズは寅さんが恋して振られることが多いのですが、
本作は初めて寅さんの明確な失恋が描かれていません。
勿論、マドンナにはきっちり惚れているわけですが・・・。
はじめて「ふられない寅さん」が生まれたという意味でも
ターニングポイントとなった作品と言えるかもしれません。