シネマ歌舞伎 歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼 松也版

いつとも知れぬ戦乱の世。\nその島国には《オボロの森》があり、古い神はそこで《魔物》になるという。\n深い森の中、飢え乾いて眼をぎらつかせ、野良犬のごとく屍の山を漁る男が一人。\nその名は《ライ》。\n我欲をむき出しにして舌先三寸、女や金を騙し取る日々。\n今は落武者狩りで屍から金品を奪っていた。\nそこへ聞こえる、轟々たる水音。\n分け入った先には巨大な滝と無数の髑髏。\nそこに現れる《オボロの魔物》。\n悪の素質を見込んだか、魔物は《ライ》の奥底にある\n欲望を呼び覚ます。\nそれは、この国の王座を我がものにすること――\nお前の生き血――\n命と引き換えにこの国の王座を与えよう\n思いがけない運命の変転に奮い立ち、\n条件つきで魔物と契を交わす《ライ》。\n俺が俺に殺される時が来たら、おとなしく命をくれてやる\n魔物が与えた〝オボロの剣〟は、《ライ》の舌に合わせて動き、人を斬っては赤い血の雨を降らす。\n血の雨はこの世を嘘に染め上げ、《ライ》の嘘に心を射抜かれた人々は、その思惑に絡め取られ滅ぼされてしまう。\n現世を地獄に変えてのし上がり、ついに王座に手をかける《ライ》。\nだが、それこそが破滅の始まりだった――。