見どころは主演2人の演技合戦
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年9月27日 15時36分
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総合評価:
3.0
カタルシスを排した、見知らぬ他人の人生をボーッと眺めるような映画だった。セリフからではなく、演技でストーリーを汲み取るストーリーであるため、明確な盛り上りや緩急を求める人には向かない作品かもしれない。
なんといっても見どころは、ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技合戦。PTDを患う青年と、カルト集団のマスターとの関係性が、じっくりゆっくり複雑に変化していく。父親と息子、信者と教祖、気のおけない友人……めくるめく感情のぶつかり合いは、一部アドリブで演じられたらしい。
マスターが君臨するカルト集団は、しだいに勢力を大きくしていく。根拠なき信仰でも、求める人はあとをたたない。それもそのはずで、なにも信じられなければ、行動する理由もなくなり、突き詰めればどんなことも自分にとって意味をなさなくなる。身を預けることのできる「確かさ」が失われた今、フレディとマスターの関係性は少し羨ましく思えた。