ジュヌビエーブ・ビュジョルドの健気な頑張りが楽しめる医学ミステリーの映画化作品
2024年2月16日 23時17分
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総合評価:
3.0
ジュヌビエーブ・ビュジョルドの健気な頑張りが楽しめる医学ミステリーの映画化「コーマ」
この映画「コーマ」の原作は、ロビン・クックの医学ミステリーで、脚色と監督はアクション小説を書き、SF小説も書き、医学ミステリーも書くベストセラー作家で医学博士でもある才人マイケル・クライトン。
ヒロインは、ボストン記念病院に勤める若い外科医(ジュヌビエーブ・ビュジョルド)で、高校時代からの親友が簡単な手術なのに麻酔から醒めず、コーマ(昏睡)の状態のまま、死んでしまいます。
そして、次の日にも若いスポーツマンが、手術の原因不明の失敗でコーマに陥り、ジェファースン研究所という、植物人間の療養施設に送られます。
これらの事に不審の念を抱き、過去にコーマの患者が意外に多いのを知って、原因究明に乗り出す女医のジュヌビエーブ・ビュジョルド。
越権行為だと怒られたりしながら、それでも調査を続けると、命を狙われて夜更けの病院内を必死で逃げ回ったり、換気口の長い梯子をよじ登ったり、果ては救急車の屋根に腹ばいになって逃走したりと、まるで女ジェームズ・ボンドといった大活躍をするので、楽しくてしかたありません。
しかも、このビュジョルドさん、小柄な体に思い込んだら命がけ、というヒステリックな目つきをして脅えながら走り回ったりするので、もうその健気で必死の頑張りには手に汗を握ってハラハラしながら、応援したくなってきます。
彼女がほとんど出ずっぱりのひとり舞台なので、おかげで他の俳優さんたちは、演技のしどころがなくなって、気の毒になってきます。
彼女には同じ病院に勤める外科医の恋人(マイケル・ダグラス)がいて、彼女の引き立て役的な存在です。
そして、外科部長になるリチャード・ウィドマークがなかなかいい味を出していて、老優、衰えず、さすがの存在感を示しています。
マイケル・クライトン監督の演出は、前半部分がかなり単調でラブシーンもどことなくぎこちない感じですが、さすがにスリラーとしての場面では冴えた演出をしています。
ビュジョルドに情報を提供しようとした機械室の職員が、電流で殺されるシーンは、はったりが効いていて、なかなか凄まじいものがあります。
その犯人に追いかけられて、夜更けの病院内を逃げ回ったあげく、ビュジョルドが必死の反撃をするシークエンスが特に素晴らしい。
それが三分の二あたりまで進んだところで、次にジェファースン研究所へ入り込むシークエンスは、コーマの患者をワイア・ロープで吊って、宙に寝かしてある病室がSF的風景で非常に面白いのですが、ここでの追いかけ回されるサスペンスは今一の感があります。
そこで、最後に真相がわかって、ボストン記念病院でのクライマックスになるわけですが、そこのサスペンスの演出もやはり今一なので、映画全体として尻すぼみの感じがします。
もし仮に、ヒッチコック先生だったら、もっとうまく演出するのになあ---などと無いものねだりをしながら観ていました。
しかし、病院内をビュジョルドが逃げ回る場面では、拳銃を持った相手を彼女が死人の応援でやっつけるというところは新手の手法で、一見の価値がありましたので、このようにもっと映画の細部にまで気を使って、小味なスリラーに徹すれば良かったのに、マイケル・クライトン監督のはったり性が邪魔をしたような気がして残念でなりません。