なくなっていくものに寄り添う
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年8月27日 17時20分
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総合評価:
4.0
序盤は映像に色がない寂しい印象なのですが、主人公の澪の心情に重なっているのか、物語が進むにつれて段々と色がついていく様子がとても印象的でした。朝の光が差す、夜の光が窓ガラスにぼんやりうつる、お風呂の水に光が反射する、といったように「光」が綺麗に撮られています。それと共鳴するように、わたしは光をにぎっている、という言葉が何度も語られていて心に残ります。
中川龍太郎監督は「死」を丁寧に描く方で、死に向き合う人たちの心情が痛いほど伝わり、別れはいつでも突然訪れてしまうことを実感させられます。この映画は、なくなっていくものを寂しくも受け入れなければならない人たちがたくさん出てきます。その物語に、上京して引っ込み思案だった澪がちゃんと関わっていて、温かい気持ちになりました。できることを大事にして自分のやりたいことを見つけて、ちゃんと終わらせてまた新しい居場所を見つけた澪に勇気をもらいました。銭湯の懐かしい匂いを思い出します。