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「チャン・イーモウ監督が描いた、清冽で瑞々しく繊細なタッチの映画史に残る永遠の名作」 初恋のきた道 dreamerさんの映画レビュー

初恋のきた道 The Road Home

チャン・イーモウ監督が描いた、清冽で瑞々しく繊細なタッチの映画史に残る永遠の名作

2024年2月8日 22時57分 役立ち度:0人
総合評価: 5.0
この映画「初恋のきた道」は、世界的名匠チャン・イーモウ監督が描いた、清冽で瑞々しく繊細なタッチの映画史に残る永遠の名作だと思います。

この映画「初恋のきた道」は、中国を代表する世界的な名匠のチャン・イーモウ監督による"しあわせ三部作"の1作目の「あの子を探して」に続く2作目の作品(3作目は「至福のとき」)で、一本の道を通して生まれた"清冽で瑞々しく繊細なタッチ"の映画史に残る初恋の物語です。

物語は父親の葬儀のために故郷の村に帰郷した息子が、その村で長く語り草になっている両親のなれそめを回想するというノスタルジックな展開で描かれていきます。

この映画の中国語の原題は「我的父親母親」で、"私のお父さん、お母さん"という事で主人公の息子の視点からの題名で、日本語題名の「初恋のきた道」は、ヒロインの少女チャオディの視点からの題名になっていて、英語の題名が「The Road Home」という事で、それぞれに味わい深い題名になっていますが、個人的にはやはり「初恋のきた道」が一番好きな題名ですね。

山あいの小さな村へ町からやって来た新任の若い小学校の教師チャンユーと、彼に恋する思いを伝えようとする少女チャオディ。
新校舎の建設現場に、手作りの弁当を運ぶ事で、彼女はその思いを伝えようとします。

そして、次第に彼等は言葉を交わし、心を通わせていきますが、"文化大革命"という大きな時代のうねりの中、彼は政治的な理由で町へ強制連行されます。

この突然の予期せぬ別離によって少女チャオディは、悲しみに打ちひしがれ、途方に暮れながらも、ただひたすら町へと続く一本道で来る日も来る日も恋する人を待ち続けます。

この若き日の母親役としてチャン・イーモウ監督に抜擢されたのが、この映画がデビュー作となる新星、チャン・ツィイーで純粋無垢で可憐な少女チャオディを鮮烈に演じていて、この映画の魅力の大半は彼女の存在抜きには考えられません。

チャン・ツィイーは、この映画の翌年の「グリーン・デスティニー」(アン・リー監督)で世界的にブレークし、2003年のチャン・イーモウ監督の「HERO(英雄)」でも華麗で鮮やかな演技を披露しています。
チャン・イーモウ監督にとっては、"第二のコン・リー"とでも言うべき存在の女優になっていきます。

チャン・イーモウ監督も、彼女をいかに可憐で魅力的に描こうかと強く意識していて、映画の大部分は彼女のクローズアップで構成され、その瑞々しくもチャーミングな存在感は、映画全体を爽やかに明るく躍動させていると思います。

我々、映画を観る者は彼女が微笑むと、一緒になって微笑み、彼女が涙を流すと、一緒になって涙を流すという、久しく忘れかけていた感情を呼び覚ましてくれます。
彼女はそんな我々映画ファンの心の琴線を震わせるヒロイン像なんですね。

そして、現在のシーンをモノクロで撮影し、過去をカラーで撮影するという映像の手法が、初恋の思い出をより美しくきらめかせ、ロマンティックな効果を与えているように思います。

過ぎ去りし日を描く、カラー撮影の言葉では到底言い表わせないような美しさは、初恋の瞬間のときめき、きらめきを鮮やかに表現していて、ため息がもれる程の映画的な陶酔の世界を味わえます。

誰にとっても思い出とは、いつまでも永遠に美しいままで記憶されるもの、そんなチャン・イーモウ監督の優しい思いが伝わるようで、麗しき映像は郷愁さえも呼び覚ましてくれます。

そして、更には中国の何千年と続く悠久の大地、黄金色の麦畑、純白の雪原を鮮やかにとらえた映像が叙情性を高めてくれます。
正しく、息をのむようなシーンの連続です。

父母への追慕の気持ちは、息子である主人公の人生にも深みをもたらし、父の棺を担いで帰りたいと強情を張る老いた母と、父が去った学校を健気に守り続けた若き日の母が二重に重なった時、"過去と現在が一本の道で繋がり"、感動が一気に頂点に達します。

初恋の延長の上にある、母であるヒロインの長い人生を目のあたりにして、主人公の息子も我々映画を観る者も、一途に人を思う気持ちというものが、信じられないような"力"を生む事を知り、つらく厳しい事も多かっただろうが、それはそれで幸せな人生だったのだろうと心の底から強く感じます。

映画を観終えて思うのは、この映画のようにシンプルな物語からは、純粋な愛の力強さがくっきりと鮮やかに浮き上がってきます。

心が荒みかけているこの時代に、忘れかけていた素直な感動を与えてくれる"愛の賛歌"とも言えるこの「初恋のきた道」をこれからも、心の宝石とすべく、何度も繰り返し観たいと思っています。
詳細評価
  • 物語
  • 配役
  • 映像
  • 演出
  • 音楽
イメージワード
  • ・切ない
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