リトル・フォレスト 夏・秋
都会で生活してみたもののなじめなかったいち子(橋本愛)は、故郷である東北の小さな集落・小森に戻ってくる。近所にはスーパーもコンビニもないため、自ら作物を育て、野山で採ってきた季節の食材で日々の食事を作り、自給自足の生活を送っていた。不便ではあるが季節の移ろいを感じ、自然の恵みを食べながら、いち子は生きる活力を蓄えていく。
この映画は東北のとある村の集落に一人で暮らす女性の姿が描かれています。物語の起承転結の変化を楽しむ内容というよりは、主人公イチコの村での生活が淡々と描かれています。自身で畑仕事をしたり、野や山で採れた季節のものを材料にして料理をつくる場面が美しいとても丁寧な映画といった印象でした。 映画の中では、春夏秋冬で何点か料理を作っているのですが、それぞれの料理に暮らしの知恵を使い、このような方法でつくるとより美味しくなるといったように、目から鱗な情報が得られます。昔の人たちの知恵を今でも用いている田舎ならではやり方なのでしょうが、便利に生活できている現代人からみると逆に新鮮でとても知的に映りました。料理のレシピも実践的に使えるものが多く、真似をしてみたくなりました。 旬の食材を生かした料理もさることながら、舞台となった村の風景も季節を通して変化していくことが美しく、この映画をみるとただただ穏やかな気持になれます。自然の中で生きていく主人公を通して、自分たちもこの世界に共存しながら生かされているのだと感じました。強いメッセージ性を謳った映画ではないはずなのに、穏やかな気持ちになると同時に何か強いメッセージを得られるような作品です。
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