風の電話
高校生のハル(モトーラ世理奈)は、東日本大震災後、広島県で暮らす叔母の広子(渡辺真起子)の家で暮らしている。それまで彼女は岩手県大槌町で家族と一緒に生活していたが、津波によって家族を失っていた。ある日、帰宅したハルは倒れている広子を見つける。眠っている叔母を残して病院を出た彼女は、これまで蓄積していた家族への思いをさけぶ。
東日本大震災で生気を失ってしまった女の子が、再びそれを取り戻す帰郷の旅路。 失礼ながら、目元が眠たげな顔立ちのモトーラ世理奈が主人公ハルに凄くマッチしていて、ロードムービーな内容とも相まって、まるで実在の少女のドキュメンタリー映画のよう。 前衛芸術映画のごとく殺風景な郊外の造成地に死体のように横たわる(自殺未遂?)ハルで幕を上げる本作は、百凡のドラマとの違いを明確に、静かに突き付けてきます。 ナレーションやモノローグも無く、ひたすらに、徐々に移り変わっていくハルの言動から、その揺れる想いを類推していくのみ。 とは言え、暗い重い作品では決してなく、ヒッチハイクで出会う人達は皆それぞれに自然体でハルに接してきて、ハルのみならず観客もまた少しずつエネルギーを分けて貰えた気分になりますし、ハルも笑顔を見せるように変化していきます。 三浦友和、西田敏行、西島秀俊と錚々たる名優陣が優しく、ときには厳しくハルと向き合う中で、彼ら自身もまた自分の生き様を見つめ直す描写がまた、とても味わい深い。
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