新興宗教にハマる親、それに戸惑う思春期の娘の複雑な胸のうち。
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年5月20日 02時58分
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総合評価:
5.0
宗教にハマってしまう人にはその人たちなりの理由があるのだな、と考え方を改めさせられる作品でした。
原因不明の体調不良に悩まされる娘のために父親が知人から手に入れた不思議な水。
その水を与えたところ、娘の体調がみるみるうちに回復していったというところから物語は始まります。
両親は謎の水の効能に驚き感動しますが実はその水はとある宗教団体が信者に販売しているいささか怪しげな水でした。しかし両親は一度娘の命が救われた体験を奇跡と信じ、新興宗教に心身ともに傾倒していきます。
娘の体調がすっかり良くなり健康になってからも両親は心酔する宗教団体のありがたい品々を手に入れるために惜しみなく金をつぎ込みます。流石に不審に思った身内が苦言を呈すも両親は激昂してその身内を追い払うほどの熱心な信者っぷり。
金の工面のためにマイホームを手離すまでに陥ります。
そんな両親の姿を見つめる思春期の娘。
思春期だからこそ気付いてしまう両親の、我が家の歪な在り方。
本当はおかしいとは思っている。
ただ、両親がおかしくしまったきっかけはおそらく自分にある。
そのきっかけは何だった?自分への惜しみない愛情から全ては始まったのでは?
両親の娘への愛情、そして娘の両親への愛情。
おかしな宗教にハマってしまった両親、それを複雑に見つめる娘。
お互いのせつないほどの愛情と優しさがその歪さごと覆い隠してしまうのです。
第三者から見れば、正直、絶望の始まりにしか見えませんが、
幸せなのか不幸なのか、それは家族である当人たちにしかわかりません。
病気の子供を健康にしたい、慈しみ守りたいという親の純粋な愛情、ただその一心で藁にも縋る思いで頼った先が宗教なのだとしたら、それが第三者から見てどんなに怪しいものだとしても、誰もそれを否定することは出来ないのかもしれません。
そしてそれを家族としての愛情で受け入れる宗教二世。
こんな家族が本当はたくさんいるのではないかな、とふと思いました。