小説を読んでいるような作品
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月21日 15時23分
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総合評価:
3.0
桜木紫乃の人気小説を「百円の恋」の武正晴監督が映画化した作品で、北海道の寂れたラブホテルを舞台にしています。
作品の大部分はラブホテルの周辺ですが、時折主人公の部屋から見える釧路の風景がホテルの雰囲気とともに閉鎖的な田舎の場末感、侘しさを醸し出しています。
監督が釧路で撮ることに拘ったことでこのような素晴らしいロケーションが実現したのだと思います。
話のスケールはとても小さく、起伏も少ない話なのですが、だからこそ一人一人の登場人物にフォーカスがしっかりと当たり、細やかな人物描写ができていたと思います。
北海道出身の安田顕さんや夏川結衣さんの哀愁あふれる中年夫婦はもちろんですが、中でも途中から登場する伊藤沙莉さん演じる女子高生と岡山天音さん演じる担任教師の描写は見事でした。
2人は現実では同い年なのですが、お互いそれを感じさせない実在感がありました。
叙情的なセリフ回しが多い中でそれが違和感にならないよういいバランスで役を演じていました。
まるで小説を読んでいるような気分になれる作品なので、小説が好きな方にオススメです。