アラン・J・パクラ監督の政治サスペンス映画の秀作
2024年1月31日 10時10分
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総合評価:
4.0
この「大統領の陰謀」「ペリカン文書」を撮った、社会派のサスペンス映画を得意とするアラン・J・パクラ監督の「パララックス・ビュー」は、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件を思わせる、政治サスペンス映画の秀作だ。
「ダラスの熱い日」のような進歩派のメッセージ映画に終わらず、観ていてハラハラさせられる娯楽映画になっているのが面白い。
シアトルで、進歩派の上院議員が何者かに暗殺される。
事件は「狂人の単独犯」で処理されるが、その後も、事件の目撃者が、次々に不可解な死を遂げる。
女性ジャーナリスト(ポーラ・プレンティス)から、「あの事件は組織的な暗殺だった」と告げられた地方紙の記者(ウォーレン・ベイティ)は、はじめは信用しないが、彼女がその後、何者かに殺されるに至って、ブンヤ根性をかきたてられ、事件を再調査していく。
そして、進歩派の政治家ばかりを狙う、影の暗殺集団があることをつきとめる。
それは、プロの殺し屋の組織ではなく、進歩派にいじけた反発を抱く、プア・ホワイトたちを教育して、暗殺者に仕立てあげていく殺人教習所だった。
その組織の中核にまでウォーレン・ベイティが入り込んだ時、すでに影の手は彼自身にも及んでいた-------。
アメリカ進歩派のプア・ホワイトへの偏見。
それに対抗するプア・ホワイトの進歩派への、いじけたコンプレックス。
アメリカ社会のどうしようもない亀裂をうかがわせる。
製作者側は、もちろん主演のウォーレン・ベイティ、監督のアラン・J・パクラとも進歩派。
パクラ監督は、この後、ウォーターゲイト・スキャンダルを暴いた「大統領の陰謀」を監督することになる。
この映画は、間違いもなく、ジョン・F・ケネディ大統領を殺したのは、中西部のプア・ホワイト、それを操った保守反動どもだと言いたかったのだと思う。