燃える戦場
「燃える戦場」は、原題が「Too Late the Hero(遅すぎた英雄)」ということで、「特攻大作戦」「北国の帝王」「ロンゲスト・ヤード」などの骨太で男性的で、尚かつ、反骨精神旺盛な作風で、我々映画好きをいつも楽しませてくれるロバート・アルドリッチ監督の戦争映画。 主演は、ショーン・コネリーの007シリーズ全盛の頃、ジェームズ・ボンドとは対照的な、サラリーマン的なイギリスの諜報部員ハリー・パーマーを軽妙に演じた「国際諜報局」や、希代のプレイボーイを嬉々として演じた「アルフィー」でブレイクしたマイケル・ケイン。 その後も、確かな演技力で、アクションからコメディ、シリアス・ドラマまで、なんでもこなすオールラウンド・プレイヤーとして、あらゆる作品に出続け、「ハンナとその姉妹」「サイダーハウス・ルール」で二度のアカデミー助演男優賞を受賞。 そして、「ジョーズ'87 復讐編」「沈黙の要塞」などのトンデモ映画にも平気で出演するという俳優でもあるんですね。 特に、「探偵〈スルース〉」でのローレンス・オリヴィエとの丁々発止の演技合戦は忘れられません。 もう一人の主演は、ジョシュア・ローガン監督の「ピクニック」でデビューし、「魚雷艇109」で若き日のジョン・F・ケネディ中尉を演じブレイクした、クリフ・ロバートソン。 その後、「まごころを君に」で、アカデミー主演男優賞の受賞の知らせを、この「燃える戦場」のロケ撮影中に聞いたというエピソードの持ち主で、一時期、ある問題で、ハリウッド映画界から干されるものの、晩年は、渋い脇役として活躍した俳優ですね。 アクターズ・スタジオ仕込みのメソッド演技が、最高に発揮された「まごころを君に」の演技は、いつまでも心に残ります。 そして、共演者の一人として、日本軍の山口少佐の役で出演している高倉健。 言うまでもなく、日本のジョン・ウェイン、クリント・イーストウッドとも言える日本の大スター高倉健は、その後もハリウッド映画の「ザ・ヤクザ」「ブラック・レイン」「ミスター・ベースボール」に出演し、その存在感を発揮しています。 特に、シドニー・ポラック監督の「ザ・ヤクザ」で、ロバート・ミッチャムと義理を通して心情的に共感していく田中健という役を、そのストイックな厳しさで演じた、この映画が一番印象に残っています。 この映画は、第二次世界大戦も終わりごろの太平洋の小さな島で展開する戦闘を描き、アメリカ軍が、高倉健の山口少佐率いる日本軍に、終始追われて苦戦している中、アメリカ軍の将校のクリフ・ロバートソンが、マイケル・ケイン他のイギリス兵とジャングルに、日本軍の通信軍事施設を破壊するために潜入していくというストーリーが展開していきます。 最終的には、ハリウッド映画ですので、当然の事ながら、主役のマイケル・ケインとクリフ・ロバートソンの活躍で、意外にもあっさり高倉健の山口少佐は撃ち殺されてしまいます。 それも何と背中の方から撃たれてしまうのです。 あまりにも、あっけない攻防だったので、もう少し、ハラハラ、ドキドキさせてくれるのかなと思ったら、何か肩透かしをくらったような感じでした。 高倉健といえども、1970年頃の日本人俳優の扱いはこんなものなのかと少し愕然としてしまいます。 ラストのクライマックスとでもいうべき、マイケル・ケインとクリフ・ロバートソンが、日本軍の通信軍事施設を破壊した後、ジャングルから飛び出して、イギリス軍の味方の陣営に走って到着するまでが、最大の見せ場のつもりなのでしょうが、このシーンが、一向に盛り上がらず、アクション映画としてのカタルシスが全く得られません。 ロバート・アルドリッチ監督作品として期待して観たのですが、この作品は娯楽映画としても、あまり成功していないと思いますね。
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