映画ポップコーンの評価
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映像派詩人、日本のクロード・ルルーシュと言える、斎藤耕一監督の名を否応なく高めたのが、この映画「約束」だ。 この後に続く「旅の重さ」「津軽じょんがら節」と並んで、まさに油の乗り切った、最も充実していた時期の作品で、斎藤耕一監督らしい、流麗な映像テクニックで押し切る1時間28分は、自信に満ち溢れている。 青春の儚さとか、人間の危うさといった、彼独特のテーマをセリフを極力抑え、舞台設定やその背景を上手に利用して、フォトジェニックに語っていく。 フランス映画、それもクロード・ルルーシュ監督の「男と女」をイメージさせるような演出方法は、1972年当時の日本映画では、恐らく斬新極まりないものだったろう。 アメリカ映画では、ニューシネマが一巡した頃だ。 旧態依然とした映像表現に固執する日本映画の中で、斎藤耕一監督の映画は、その殻を打ち破るような画期的なものだったに違いない。 この映画は、始まって10分ほどはセリフがない。 日本海に沿って北上する列車、車内の点描。 海の景色、浜辺の波、空を飛ぶ鳥。 子供が遊び、ブランコが揺れている。 人物抜きの映像だけで見せるショットが多い。 派手なアクションや奇抜なストーリーだけを追う姿勢はない。 セリフで状況と心理を説明する、近年のTVドラマの対極にある。 まさに映像派詩人の名に相応しい叙情が醸し出される。 萩原健一と岸恵子、この組み合わせも意外だし、その舞台が冬の日本海沿岸を北上する急行列車となれば、それだけで何か日本映画離れした雰囲気を期待させる。 役の設定は、萩原健一がひと仕事片づけようというチンピラの男で、岸恵子が肉親の墓参りのために仮釈放された女囚で、次の朝までに刑務所へ戻らなければならない。 列車の中で、偶然乗り合わせた男は、向かいの席に保護司と黙りこくったまま座る女に、ある種の母性を感じ、やがて愛情であることを自覚する。 そして、列車を降りた後にも続く、男の若く一途な愛情表現に、女も次第に心を動かされ、感情が高まっていく。 そこに、女の愛に破れた過去や、殺人を犯して刑事に追われる男の身の上が絡まってくる。 男の心情にほだされた女は、刑期を終える二年後の再会を「約束」する。 だが、刑務所に女を見送った直後、男は強盗犯として逮捕される--------。 約束の日の、約束の場所で、いつまでも待ち続ける女の表情は虚ろだ。 小さなすれ違いだが、二人にとっては決定的に切なく、哀しい。 GSのテンプターズから、俳優に転向して間もない頃の萩原健一のキャラクターを、実に上手く活かしていると思う。 女に向ける、がむしゃらな好意に満ちたナイーヴな優しさが印象的だ。 ベテラン女優の岸恵子の方も、萩原健一を巧みにリードして、男から一方的に押し付けられる好意に、ひと筋の灯りを見い出す、寂しい女の姿を演じて、実に素晴らしい。 陰影に凝ったライティングや、望遠レンズで引きつけたクローズアップショットの多用など、斎藤耕一監督ならではの映像テクニックが、思う存分発揮されていると思う。 クロード・ルルーシュ監督の影響を受けたと思われるショットも数多くあり、流麗な映像感覚で見せることが日本映画でも出来るのだ、ということを証明した作品だと思う。
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