神話となった少年の実像に迫る
2021年9月24日 11時20分
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総合評価:
4.0
監督はニュー・ジャーマンシネマの旗手でありながらフランスを第2の母国とするフォルカー・シュレンドルフ、構想から完成まで13年の紆余曲折、独仏合作でベルリン映画祭に出典。歴史上幾多の衝突を繰り返し現在でも外交問題を抱えるふたつの国が、1本の作品によって和解を目指すかのようです。
フランスの高等学校では教科書で教材として取り上げられるほど有名で、パリ市内を走る地下鉄の駅名にもなっているというギィ・モケが主人公。レジスタンス運動のヒーローとして過剰に美化するのではなく、恋にも友情にも悩むごく普通のティーンエイジャーとして描かれていて好感が持てました。
戦争という非常事態において、多くの国民が我が身の安全のために権力に従ってしまうことを痛感します。その一方では自らの信念を貫いて行動する、モケのような若い世代に僅かな希望がありますね。魂の自由のために肉体の死を受け入れられるかという、究極的な二者択一を迫られる終盤戦が圧巻ですよ。