心に染み入りました
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月9日 14時43分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
そこまで日常に「数学」というものを意識してこなかったのですが、事故により80分しか記憶の持たない数学者である博士の言う「友愛の数字」「潔い数字」などを聞いていると、段々と興味が出てくるのが不思議でした。
そんな博士の元に通う事になった家政婦の杏子は、そんな独特な博士を根気よく見つめ、決して否定せず務めていく所が素敵でした。しかし、最初はかなり戸惑っている様子に、自分も一緒になって戸惑い、少しずつ博士に慣れていくところも共感できました。段々と杏子の一人息子も博士に受け入れられ、穏やかに3人の時間が流れていくところも好きな部分です。
しかし、いつも博士とは距離を置いている義姉の、博士との過去、それもつらい結果となってしまった二人の過去を、覚えていない博士の代わりにたった一人でしょって行かなくてはならない義姉の深い悲しみは、なんと大きな代償を負わされたのかと、その辛さをヒシヒシと感じてしまいました。その後、離れと母屋の扉が開けられた事で、杏子の温かく広い心が義姉にもいつか伝染していく事を期待させられました。