愛ゆえに幸せ、愛ゆえに怖い
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年1月30日 18時45分
役立ち度:0人
総合評価:
5.0
随分前の映画でしかもフランス映画です。しかしこれは映画というより芸術作品に近いと思える映画でした。
全編で流れるメリーゴーラウンド的なBGMがまた何ともこの映画の雰囲気にマッチしています。冒頭のシーンから大胆な濡れ場があり、まずそこからこの世界観に持っていかれます。そして最初ベアトリス・ダル演じるベティが可愛いのですが、愛しすぎるが故にドンドン壊れていく様はもう目を覆いたくなることの連続です。
私はこの人はもう精神が崩壊しているのだろうと本気で思っていました。感情的になりフォークで人を刺そうとしたり、家に火を放ったり、最後の目を抉るシーンは数ある映画史上の中でも強烈なインパクトを残す問題作であるように思えます。
ゾルゲも最初は真っすぐなベティを愛おしく思うのですが、あまりにも過激な行動に手を焼きはじめるのも惹きつけられます。既に精神病棟にいるベティに声をかけても無反応でその後にゾルゲのとる行動はもう全てが狂気なのに、そのすべての気持ちが痛いほどわかるパラドックスに、もう見たく無いのに見てしまうという不思議な作品です。
男女のなにげない日常を描いているのにこれほどまでにインパクトを残すのはベネックス監督の男女の愛の究極とは?という疑問に真摯にぶつかってギリギリの感情をフィルムに収めた渾身の映画だからではないだろうか。
最後の白い猫はまるでベティの生まれ変わりであるかのような演出に心底いろんな意味での恐怖を感じました。と同時にゾルゲのベティのいない虚無感と平穏な生活が送れる安堵感の二面性を全部合わせた何とも言えない気持ちを映像化したラストシーンです。
ハリウッドのような派手な演出もいいのですが、こういう作品がもっと出てきて欲しいですね。怖くてグロいんですけど。
イメージワード
- ・不気味
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- ・かわいい
- ・ロマンチック
- ・パニック