映画ポップコーンの評価
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この映画「オルカ」は、リチャード・ハリスの船長が、シャチの一種のオルカとの死闘を展開する物語ですが、往年のグレゴリー・ペックが主演して巨大な鯨と死闘を繰り広げた「白鯨」のような文芸大作ではなく、「ジョーズ」の大ヒット以来、一大ブームとなった"動物パニック"物の系譜に連なる、海洋パニック・ロマンとも言える、"スパック・ロマン"と銘打たれた、ショッキングなスペクタクル作品だ。 この作品は、当然、「ジョーズ」の大ヒットの影響を受けて作られた映画ですが、白い海の猛獣オルカが人間に次々と復讐していく凄いスペクタクルが見どころで、しかも、このオルカは声によって交信出来る上に、知能が大変優れているので、海岸沿いの送油管を壊して丘の上の石油貯蔵所を爆発させるなど、頭脳的な作戦をたてて襲ったりするのです。 リチャード・ハリスの船長が、メスのオルカを捕まえようとして死なせ、その死体を甲板に吊るすと、腹から胎児がはみ出してくるというショッキングなシーンがあり、それを夫のオルカが甲板にいるリチャード・ハリスの姿をじっと哀しげな目で見つめ、その姿を目に焼き付けるクローズアップが、この後に展開するオルカの"壮絶な復讐"の重要な伏線になるのです。 この映画の見どころは、この凄まじいオルカの襲撃のスペクタクルとともに、オルカの母子を殺された復讐に燃える哀しい感情表現が、実に鮮やかに画面の中で描かれていることだと思います。 どこまでも追いかけて復讐しようとするオルカに対して、リチャード・ハリスが「お前は何者だ!」と叫びます。 突きつめて考えてみると、このオルカというのは、"人間の原罪意識の象徴"なのだと思います。 原罪意識、人間が積み重ねてきた数々の罪。 その罪の意識が生み出した"恐怖感の象徴"こそ、オルカだと思うのです。 映画の中で、オルカの目が何度も何度も大写しになります。 その目は、時に怒りに燃え、復讐に燃え、時には哀しみの涙さえたたえていました。 そして、何よりも自分の母子に対する愛の心が、その目の中に鮮烈に表現されていたと思います。 マイケル・アンダーソン監督が一番表現したかったのは、生きとし生けるものが持っているはずの感情、心そのものだったように思います。 この映画を単なる"動物パニックもの"から一線を画した、優れたドラマにしたのは、酔っ払い運転手による交通事故のため、愛する妻と子を亡くした過去を持つリチャード・ハリスが、そういう過去のトラウマを引きずりながらも、オルカとの闘いをしなければならなくなる執念の男を、哀しみをたたえて熱演しているのと、海洋学者に扮したシャーロット・ランプリングの知的な奥深い演技によるものだと思います。
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