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「コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督の実録政治映画の問題作」 戒厳令(1973・フランス・イタリア) dreamerさんの映画レビュー

戒厳令(1973・フランス・イタリア) Etat De Siege

コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督の実録政治映画の問題作

2024年2月1日 18時48分 役立ち度:0人
総合評価: 5.0
この映画「戒厳令」は、ラテン・アメリカの某国のファシズム的な警察国家の闇を衝いた、コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督の実録政治映画の問題作ですね。

ギリシャの軍事独裁政権の実態を暴いた「Z」、ソ連のスターリニズムを痛烈に批判した「告白」に次いで、社会派の俊英コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督が撮ったのが、ラテン・アメリカの某国を題材にとり、背後にアメリカの力を負いながら、ファシズム的な警察国家体制を敷いている国の実態を生々しく描いたのが、この映画「戒厳令」なのです。

この作品は、コンスタンタン・コスタ=ガヴラス監督お得意の実録ものであり、1970年8月10日にモンテヴィデオで誘拐され、銃弾を頭部に受けて殺されたイタリア系アメリカ人、ダン・アンソニー・ミトリオーネをモデルにしています。

ガヴラス監督は、当時の新聞、公式文書など、ありとあらゆる資料を調べつくし、ミトリオーネという男が受け取っていた月給の金額まで知るほどだったということですが、そういう正確な事実を基にしたという強みが、この映画にはあると思います。

トップシーンの戒厳令下の街頭の場面が、まず非常に冷酷で薄気味悪いムードを湛えており、一種クールな魅力を画面に与えていますが、南米のチリに長期ロケーションをした効果があって、現地での生々しい臨場感を観ている我々に感じさせます。

そして、この映画は、ガヴラス的演出で、フラッシュ・ショットによる回想シーンなどを随所に挿入し、時を自由に前後させながら展開していきます。

「Z」「告白」ともに、政治映画でありながら、ガヴラス監督の手にかかると、面白すぎるくらい面白くなりますが、ここではその映画的な技巧の円熟味は、ますます冴えていると思います。

主人公のフィリップ・マイケル・サントーレ(イヴ・モンタン)の死が、まず冒頭に出て、その葬儀のシーンあたりから、回想で彼の生前に遡り、革命派が誘拐するプロセスが歯切れよく描かれてくるあたりで、映画は観ている我々を否応なしにその世界に引きずり込んでしまいます。

この革命派の尋問につれて、サントーレという人物像が、次第に浮き彫りにされてきます。
彼はイヴ・モンタンが扮していることからもわかるように、実に風格のある人物であり、外見は良きアメリカ人であり、愛する家族を持つ良きパパなのです。

このように、サントーレという人物を、決して悪玉仕立てにしていないところに、ガヴラス監督の狙いもあったのであり、彼がアメリカから南米へ派遣されて、警察国家の陰の指導者となり、反乱分子に残酷な拷問をかけたりさせる、裏の張本人であるということが、実に感じのいい男だけに、観る者を余計に慄然とさせる効果を持っていると思うのです。

警察学校かなにかで、人体を使って拷問の実習をするシーンなど、かなりな残酷描写です。
こういう教育を受けた連中は、いつか、いとも冷酷で人間的な血の通わぬ非情な警官に育っていくのだろうと思います。

そのよき例が、秘密警察の隊長ロペスで、レナート・サルヴァトーリの何とも言えぬ凄みには圧倒されます。
一種、怪物的な魅力すら漂ってきて、脇役一筋で、地味なレナート・サルヴァトーリが、いつの間にこれほどの重量感のある俳優になっていたのだろうと驚いてしまいます。

このロペスの率いる秘密警察が、革命派の青年たちの居場所を突きとめ、追い詰め、逮捕するあたりの何とも言えない恐ろしさは、観ている我々を心の底から震撼させます。

街頭を革命派の青年が歩き、さりげなく警察官が追いつめていく、その画面にミキス・テオドラキスのクールな曲がかぶさるあたりは、どこか金属的な感じさえするムードで満たされます。

そして、この間、国会では多くの議論が交わされますが、誘拐した革命派グループの再三にわたるコミュニケにもかかわらず、結局、サントーレの生命を救うための動きは全くなく、革命派も彼を殺害する以外に方法がなくなってしまうのです。

国家とか組織とかが、個人などをまるっきり無視して通りすぎる冷酷さが、痛いほど画面の中から迫ってきます。

そして、ラストシーンでは、サントーレの死後、彼の後任として空港に到着したアメリカ高官の姿。
それをじっと見つめている、革命派の青年たちの表情の数々を映し出して、この映画は終わります。

ガヴラス監督式のスリルとサスペンスに満ちた面白さは確かにありますが、しかし、彼の最高作である「Z」の大衆講談的な面白さからはいつか飛翔して、生の実感を込めた不気味さが、ひたひたと我々の胸に押し寄せてくる思いがするのです。
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