国境と血縁をこえてひと夏の家族になる
2021年7月31日 03時55分
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総合評価:
4.0
若くして夫と死別して幼いふたりの男の子を抱えることになったヒロインの矢野夕美子ですが、その表情は常に凛としていて悲壮感はありません。夕美子役にキャストされている尾野真千子の、必要以上に感傷的になることのない自然体の演技にも好感が持てました。
海の向こうから遺灰を抱えて遙々やってきた息子の妻に、杖を振り上げて罵りの言葉を浴びせる義父の吳仁榮にはビックリですね。親より先に亡くなることを「罪」とする、台湾東部地方の独特な風習を学ぶことが出来ますよ。戦時中に日本軍の占領を経験した吳仁榮、戦争を知らない世代の夕美子。生まれ育った環境や価値観もまるっきり違い年齢差もあるふたりが、どこまで心を通わせられるのかも見ものです。
山沿いの曲がりくねった道のりを夕暮れをバックに、兄弟が手をつないでひたすら歩き続けていく終盤のシーンに胸が締め付けられます。やがて遠くに見えてくる小さな家の明かりと、心配して外で待ち続けている母の姿にはほっとひと安心してしまうでしょう。