ある監督と女優の愛と友情の記録
2021年7月30日 04時04分
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総合評価:
5.0
ある時は新進気鋭の映画監督と売れっ子の女優、ある時はドロドロの愁嘆場を繰り広げる男と女、またある時はサバサバと割り切った友だち同士。平野勝之と林由美香の関係性は、その時々で目まぐるしく移り変わっていて面白いです。
ピンク映画から一般作品へとシフトチェンジしていく平野監督、AV女優という肩書きにとらわれることなく政界進出まで目論む由美香。両者のあいだに微妙な距離感が生じていく中でも、お互いへの愛憎半ばするような気持ちは変わっていません。ケンカ別れしたかと思えばくっついてを繰り返すこのふたりを1番に的確に言い表す言葉は、同じ時代をともに駆け抜けた「戦友」でしょうか。
実家の母親とも連絡が途絶えて撮影現場にも顔を出さなくなった由美香を心配して、平野監督がカメラ片手に彼女のマンションを訪ねる場面はショッキングですよ。1度は自分自身に「失格」の烙印を押した平野監督が、真夜中の東京を自転車に乗って飛び出し北海道へ向かう再出発のシーンが感動的です。