映画ポップコーンの評価
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この映画「ブラックホーク・ダウン」は、1993年のソマリア紛争にアメリカが介入した際、いつまでも事態の解決を見ない内戦に業を煮やしたアメリカ軍が、内戦の当事者の一人であるアイディド将軍を捕らえるべく計画したミッションを描く、マーク・ボウデン原作の同名のベストセラーを映画化した、軍事ドキュメント・ドラマだ。 予定通りに事が運べば、何の問題もなしに数時間ですべて決着が着くはずだったその計画が混乱を極めていき、結果として何の関係もない一般市民を含め1,000人以上の死者を出した究極の軍事的失策となったのだ。 映画は、そのミッションが坂道を転げ落ちるように収拾がつかなくなっていく様を、圧倒的な迫力で見せる。 監督がリドリー・スコットだし、出だしは快調、テンポのいい演出で話はどんどん進んでいく。 リドリー・スコットの演出は、視覚的効果以外では、無駄がなく、脇道に寄らず、いきなり本題にズバリと斬り込む直線的な演出が特色だが、この映画ももちろんその路線は健在だ。 映画が始まってから30分くらいで、既にクライマックスみたいな戦闘シーンに入る。 敵の大将拿捕のためにヘリコプター(ブラックホーク)が、編隊を組んで波打ち際を進んでいくのだが、この編隊を組む戦闘機というのは、確かに戦争映画の醍醐味の一つではありますね。 そして、いざ戦闘が始まると、リドリー・スコット監督のパワー全開という感じで息つく暇もない。 しかも、このテンションの高さが残り1時間半、ずっと続くのだ。 スピルバーグの「プライベート・ライアン」の前半30分の戦闘シーン並み、いや、それ以上のテンションが、1時間半続くのだ。 しかも、リドリー・スコット監督お得意のエログロ描写満載で、はっきり言って、途中でまだ続くのかと少し食傷気味になり、この辺で少しスローな展開にならないものかと思ったほどでしたね。 この映画は戦争映画なので多くの俳優が登場しているのだが、主要な役は米軍指揮官のガリソン大佐に扮するサム・シェパードを筆頭に、ジョシュ・ハートネット、ユアン・マクレガー、トム・サイズモア、エリック・バナらといった布陣だ。 ジョシュ・ハートネットは「パール・ハーバー」に続き戦争映画への出演となっており、半分は恋愛ものだった「パール・ハーバー」に較べ、今回は超シリアスで、しかもほとんどのシーンでヘルメットを着用し、顔は汚れていてはっきりしない。 その他の面々も皆はまっていて、サム・シェパードはこういう役を演じさせたら貫禄だし、トム・サイズモアは戦争ものには欠かせない俳優となっている。 原作がどうなのかはわからないが、この映画の最大の特徴は、ありがちなアメリカ万歳にもその逆の人道主義に走り過ぎの戦争反対にも与せず、ただただ究極のアクションとして存在していることだ。 リドリー・スコット監督は、最初からそのように演出しており、命を賭けた戦いだけをとらえ、何が正しいか、何が悪いかという判断は保留していて、観客にその判断を委ねているようだ。 本当の軍人にとって戦争の意味や善悪の判断は必要なく、ただ命令が下りたから戦うだけなのだ。 そして、戦闘が始まれば、相手を倒さなければ自分がやられてしまう。 だから戦うだけだ。それが軍人というものなのだ。 もちろん、この映画は米軍の視点から描いているから、アメリカ寄りと言えないこともないが、はっきりとアメリカ礼讃の立場はとっていない。 しかし、そうは言っても、非常に気になるのは、この戦闘による死者が、ソマリア側1,000人以上に対し、米軍はたったの18人という、ほとんど戦争というよりも一方的な"大量虐殺"に等しいことだ。 映画の中では、サム・シェパードがアイディド将軍の部下に対し、お前たちがやっていることは内戦ではなくて殺戮だと糾弾するシーンがあるのだが、結局、米軍も同じことをやってしまうのだ。 しかも、エンド・クレジットが始まって死亡した米軍人の名前が全員羅列されるのに、ソマリア側の死者は1,000人以上で、終わってしまう。 この差は一体なんなのだろう?----------。 最新鋭の武器を所有する米軍の方が、有利なのは最初からわかりきったことで、だからこそ高をくくって、よく考えたら無謀とも言えるこういう計画が実行に移されたわけだが、アメリカという"軍産共同体国家"がいつもこんなことをするから世界中から嫌われているということに、まだ気づかない連中が多すぎるという気がしますね。 こういう殺戮をやっておいて、自分の国がテロリストにやられると、いきなりショック状態に陥って、やられたらやり返せと連呼する。 私は基本的には、アメリカという国は善意の国だと思いたいのですが、アメリカが他の国で行なっていることもテロリズムに他ならないということを、アメリカ国民はもっと知っていた方がいいのではないだろうか。
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