南の楽園で少年と少女が大人への窓を開く
2021年9月17日 18時32分
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総合評価:
4.0
オオバヒルギからマングローブ、ガジュマルにタコノキまで。物語の舞台となる奄美大島に豊かに生い茂る原生林と、晴れ渡った青い空の色には癒されました。波打ち際に漂着した見知らぬ男性の遺体に、いち早く気がつくのは主人公の男子高校生・界人。夜空に光輝く満月の美しさと海面の静けさによって、まったく残酷なイメージはありません。
この島でユタとして信頼を集めているイサの、「死は生の始まり」という言葉が全編を通じて力強く響いていますね。イサの娘でもあり界人に想いを寄せている杏子役に扮した、阿部純子にも魅せられます。まさに珊瑚礁から湧いて出たマーメイドのようであり、少女と大人の女性の間で揺れ動いているかのよう。
時おり映し出されていく都会の街並みの猥雑さとのコントラストと、離れて暮らす界人の父親・篤との距離感も絶妙です。 久しぶりに再会を果たした親子がいかなる会話を交わすのか、都会と島のどちらに居場所と幸せを見出すのか注目してください。