スクラップの中に小さな希望がキラリ
2021年9月14日 04時21分
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総合評価:
4.0
舞台となるのは今なお内戦と独立・分断を繰り返すヨーロッパの小国ボスニア・ヘルツェゴビナで、市街地の壁に残る縦断の跡が生々しいです。ふたりの幼い子どもを育てているナジフの暮らしも決して楽ではありません。スクラップ工場での廃車の解体、何とか使えそうなパーツをかき集めて小銭を稼ぐ姿は文字通り「鉄くず拾い」ですね。
妻のセナダが3人目の出産を控える中で、次から次へと一家に降りかかってくる災難には胸が痛みました。健康保険にも加入をしていない夫婦が必死で分割払いを懇願しようとも、アッサリと門前払いを喰らってしまうのが過酷な現実。一方では貧困層やマイノリティに救いの手を差し伸べる団体、「子供の地」に僅かな希望が見えてきます。
演技経験の全くないナジフ・ムジチを主演に抜擢して、本人役としてカメラの前に立たしてしまうダニス・タノヴィッチ監督の大胆さには驚かされるでしょう。ふたりが無事に新しい生命を授かった時に、いかなる名前を与えるのかにも注目してください。