高齢化社会にフィットしたかっこいいおじいさん映画
2020年9月14日 13時08分
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総合評価:
4.0
当時は高い評価を得たのですが、近頃はあまり振り返られない映画です。ところがこの映画、派手ではないけれど味わい深く、なかなかに良い映画です。
自分の腰も曲がり、命も長くないと感じている老ストレイト。彼は死ぬ前に連絡を一切とっていない実兄に会いに行くため、芝刈り機に乗って農道を進みます。自分の出来る範囲で、誰の手を煩わせることもなく、のんびりと確実に兄のもとへ向かうのです。
「変わり者」「車で行けばいい」など、ふつうの人は言います。しかし、ストレイトはそんなことを気にしません。あくまで自分の進むべき道を、のんびりと向かいます。
この姿は、忙しい現代社会人へのアンチテーゼとも言えますが、そのような警告めいたものほど荒々しくありません。ただ、最後まで人であろうとするならば、誰の手を借りずのんびり自分のみちをあるけばいいじゃないか、という心にじわりとしみこむ映画となっています。
夜になると何やら怪しいものたちがストレイトを脅かそうとしますが、それにすら動じない老ストレイトが非常に素敵な映画です。延々と続く麦畑なども、いっそう「良きアメリカ」の印象を与えてくれます。
劇中では繰り返されないものの、彼の行く道は360キロメートルもあり、とても芝刈り機で歩めるような距離ではありません。それでも、自分の出来る方法で行こうとする、という意思が大切なのだと教えてくれます。