映画ポップコーンの評価
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アラン・ドロンという俳優は、例えば「地下室のメロディー」や「シシリアン」でジャン・ギャバンと、「山猫」や「スコルピオ」でバート・ランカスターというベテランの大物俳優と競演したりして、尊敬するベテラン俳優の胸を借り、果敢に挑んでいくところが凄いなと思っています。 そして、女優陣に目を向けると、これまた彼が敬愛してやまない、大女優のシモーヌ・シニョレと「帰らざる夜明け」と今回紹介されている「燃えつきた納屋」で競演しているんですね。 彼の俳優としての成長期に、ヌーベルバーグの監督たちとは敢えて組まずに、ルネ・クレマン、ルキノ・ヴィスコンティ、ミケランジェロ・アントニオーニなどの名匠の作品に出演していたように、本当に彼は監督、共演者に恵まれて大スターの道を切り開いていきましたよね。 この映画「燃えつきた納屋」は、実に美しい映像に満ち溢れた作品ですね。 その美しさに、文学的な香気が匂い立つほどです。 そして、ほとんど、戦慄さえ感じさせてくれる作品だと思います。 まず、映画の冒頭での、一面の雪の銀世界に息をのんでしまいます。 一年の半分は、白一色に埋もれるという、フランス東部の高地の小さな村。 この閉鎖的な地域社会で殺人事件が発生する。 休暇旅行でスイスへ向かう、通りすがりの金持ちのパリ女が、高級車から刺殺死体となって投げ出され、所持金を奪われていたのです。 そこへ、ブザンソンの街から、予審判事のアラン・ドロンが、捜査のためやって来ます。 そして、彼は現場に近い農場一家に、容疑の目を向ける。 この農場を切り回すのは、雌牛のようにがっしりと、侵しがたい尊厳さえ持つ、初老のシモーヌ・シニョレ。 今は、無力に老いた夫と、実は不満がいっぱいの二組の息子夫婦と、娘と孫たちの大所帯を、気丈に支えて守り抜く50女は、村人からの信頼も厚く、警察署長さえ一目置くほどの存在なんですね。 だが、判事は、一家の次男坊を徹底的にマークし、一家に接近し、内部に踏み込んで探ろうとする。 この、いわばヨソ者の"闖入"によって、彼ら親子の断絶と裏切りが暴かれ、それは一家の崩壊へと繋がっていく--------。 この映画は一応、ミステリ仕立てになっているが、そのサスペンスは、むしろ判事とヒロインの農婦との、"心理ドラマ"にあると思います。 いわば、敵対関係にある二人の、けれど"強く美しい都会の男"と、"母に似た立派な女"との、言わず語らぬ"郷愁と敬慕の思いの交流"こそ、私の胸に切なく迫ってくるんですね。 この映画の題名「燃えつきた納屋」は、農場のアダ名ですが、一家の現実と、女家長シモーヌ・シニョレの心情的な世界の終末を象徴しているような、いい題名だと思いますね。 青春の夢を捨て、妻として、夫を愛し、子供たちを愛して、必死に働き、守り続けてきた"納屋"の、だがその炎上に、揺らめいた最後の"女の情念"が痛ましいですね。 しんしんと降り積む雪の風景と、ジャン・ミシェル・ジャールの哀切の旋律に、人の世の人の営みの孤独が、そくそくと胸に迫ってきます。
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ショック療法
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パリの灯は遠く
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ル・ジタン
ストーン・カウンシル
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