現在も続くチベット問題を恐ろしくも美しく描く!
2020年8月21日 09時53分
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総合評価:
4.0
現在も問題となっている、中国によるチベット支配の問題をチベット側、特に法王ダライ・ラマ14世の視点で描いている作品です。ダライ・ラマ14世自身も自伝を出版していますが、この自伝とは異なったアプローチでチベット問題を描いています。
とにかくチベット人の生活する素朴な風景や、法王が住む宮殿、そして多くのチベット僧侶などの映像が美しいです。カメラが発達しているのではなく、切り取る風景や心の中で思い描いた映像が、そのままフィルムに映ったような印象を受けます。前半の法王選定の場面ではチベット人のただの子どもとして、そして青年になり法王として立ったときには、自分以外の僧侶全てが死んでしまうのではないか、という不安。これらが心に与える優しさや不安を、フィルムでよく表現しているところが素晴らしいところです。
この映画だけではチベット問題を全て語ることは出来ないのですが、チベット仏教という特殊な法王制度を持つ国に興味を持ってもらうには大変良い映画と言えます。チベットを脱出しなければならない時の苦しみや、このまま民を残していいのかという葛藤も描かれており、見ているこちらも考えさせられる映画です。
チベット独自の文化である鳥葬や、テントでの生活、さらに高山での雪の大変さなども描かれており、ちょっとした文化ガイドにもなっています。