観に行って本当に良かった。
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年8月16日 16時11分
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総合評価:
4.0
細田守監督作品。お気に入りがたくさんあるので期待して観に行きました。
前半のお話は田舎に住む平凡な女子高生「すず」がUという仮想世界で歌姫「ベル」として活躍し、人気を獲得していく。すずには母親と死別した悲しい過去があり、そのため現実世界では自分の持つ力を発揮できていなかった。それがネット上の仮想世界という自由な世界で本来の姿を取り戻すという形で展開していく。母親との別れはすずの人生において暗い影を落とした。そして、すずが持つ本来の力を弱めていった。そこに、仮想世界という自由で匿名性が高い表現の場が与えられたことで、すず自身の歌という表現力が発揮されたのだ。この一連の流れはネットが持つ可能性、ポジティブな面を描いているのだと感じた。
後半はUの中で活躍するすずの前に竜という正体不明のアバターが現れ、すずと徐々に交流しその正体に迫るといった話になる。竜はUの世界で暴れまわり、他のアバターを破壊するなど問題行動を起こし、周りから嫌われている。竜に対する誹謗中傷はすさまじく、また、竜を排除しようとする正義の集団まで現れる。まさに現代のSNSなどで行われていることと同じ構図である。ひとつ間違いを犯したものには何を言っても構わない。集団で徹底的に潰しにかかる。この話からはネット上にある暴力の形が見て取れる。
そして、竜の正体が虐待されている子供だとわかったときに、すずは自分の正体を仮想世界に晒してまで助けようとした。そして、その思いに賛同した世界中の人々が一つになってすずを後押しした。あの合唱のシーンはとても美しく素晴らしいものだった。仮想世界は自由で開かれた表現の場になりうるが、それは現実世界の生身の人間があってこその世界なのだと感じることができた。
すずの周りには、いつも心配してくれる幼馴染のしのぶくん。毒舌だけど面倒見のいいヒロちゃん。暖かく見守ってくれる合唱隊のおばさん達。そして、いつも側ですずのことを支えてきたお父さん。たくさんの人に囲まれてすずは強くなった。人の想いは人を強くするんだということを実感できた。本当に観て良かったと思える作品。
イメージワード
- ・楽しい
- ・泣ける
- ・勇敢
- ・切ない
- ・ファンタジー