「アメリカ的な食事でキャラクターの生活感や心情を表現する独特の演出」ファーゴ Oroさんの映画レビュー

ファーゴ Fargo

アメリカ的な食事でキャラクターの生活感や心情を表現する独特の演出

このレビューにはネタバレが含まれています

Oro

2021年1月31日 11時56分役立ち度：0人

総合評価： 5.0

「ファーゴ」１９９６年公開のコーエン兄弟制作の映画です。
物語は雪積もる冬の季節、ノースダコタ州の都市ファーゴを舞台に描かれたサスペンスドラマです。自動車販売店営業担当のジェリー・ランディガードと言う一人の男が居ました。
彼は、会社の社長の娘と結婚し、安定した役職と、裕福な暮らし、子供もおり、一軒家と車もあり、普通に考えれば申し分無いはずの生活にも関わらず、それだけでは満足できず、新たに大きな投資として４０エーカー（１６㌶）の広い土地を手に入れ、駐車場経営をして儲けようと考えていました。
しかし、その投資のための莫大な資金のあてはなく、唯一のあては妻ジーンの父だけです。ただ、裕福な養父ウェイド・グスタフソンは、大きな会社の社長をしているだけあって、簡単に金を貸してくれるような間抜けな男ではありません。
そこで、ジェリーは養父ウェイドから金をせしめる為に、街のチンピラ二人を雇って、妻ジーンを誘拐して、養父から身代金８万ドルを奪うと言う狂言誘拐を計画します。
ところがどっこい、間抜けなチンピラ二人はなんとか妻ジーンの誘拐には成功しますが、偶然パトロール中の警察官に車を止められ、職務質問を受けてしまい、この警察官を射殺します。さらに目撃者二人も殺害します。
ジェリーの考えとは裏腹に、事はどんどん深刻で大きな事件へと発展して行きます。
翌朝、妊娠中の女性署長マージ・ガンダーソンが殺人事件の捜査に乗り出し、この事件の真相を追います。
この映画は誘拐計画犯ジェリーとチンピラ二人、妊娠中の女性所長マージの四人に視点を置いています。しかし、主人公は大きく分けると二人。ジェリーとマージです。
ジェリーは裕福な暮らしと安定した安泰な職業があるにも関わらず、いつも美味しくなさそうで不幸せな食事をしています。豪華で大きな家で食事をし、息子はせっかくお爺ちゃんが家に来て一緒に食事をしているのに、途中で食べるのをやめ、マクドナルドに行ってくると言って出て行きます。皮肉なことに食べている家の食事もハンバーガーです。アメリカ的な描写のワンシーンですね
一方で事件を追う女性所長マージは、ブサイクで情けない下っ腹の出た、ハゲ頭のパットしない旦那と小さくて質素な家に住み、出産前の大きなお腹を抱えた妊婦にも関わらず、早朝まだ日も昇らない時間に呼び出され、殺害現場の検証に向かうキツイ職務を負っています。しかし、小さな幸せでこの夫婦はいつも幸せそうです。早朝に呼び出された妻の為に朝食を準備してくれる優しい旦那に彼女はニンマリ。
夜も二人で、ビュッフェのレストランへ食事に行きます。アメリカ的な豪華なビュッフェは食欲をそそります。事件の経過を報告に来た同僚もつい「フライは美味いか？」と尋ねて来ます。

この映画は物語が抜群に面白くて引き込まれますし、独特の演出と世界観が最高に面白いです。
この食事を使った不思議な演出は見ていて楽しいです。
ミザリーをちょっと思い出しますね。