見ていてつらくなる、けれど愛
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年8月13日 11時01分
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総合評価:
3.0
ラース・フォン・トリアー監督の作品ですから、ただ美しい愛を描くだけでは終わりません!スコットランド地方で石油採掘を行う夫は、ある日事故に巻き込まれ下半身不随となります。彼は罪の意識から美しい妻に向かい、「自分以外の男と関係し、その様子を聞かせてほしい」という願いを伝えるのです。神を信じ、夫の願いを叶えようとする妻は次第にその身体と心を崩壊させていきます。
神の与える試練とでも言うべきこの悲劇は、あえてカメラ映像を粗雑にすることで奇妙なリアルを醸し出します。他人のセックスをのぞいているような、悪いことを見ているような複雑な気持ちにさせられるでしょう。そしてその夫の要求も非常におそろしいものです。しかし、妻のひたむきな優しさは永遠にそれに従い続けます。たとえ自分の身がボロボロになっても痛ましいくらい、純真なのです。ここまで見ているとだんだん苦しくなります。
最終的には最底辺の娼婦と見なされ、報われずに死ぬ妻ですが、果たして「報われる」とはどのようなことなのでしょう。教会に入れてもらえることがそうなのでしょうか。それは違うとこの映画は教えてくれます。最終的に神が与えたものは、夫の奇跡です。それにしてもつらすぎる映画ですが、西洋の「神」の厳しさを感じられる映画です。