巨匠ハワード・ホークス監督の遺作
2025年4月30日 07時45分
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総合評価:
4.0
この「リオ・ロボ」は、「赤い河」を皮切りに、「リオ・ブラボー」「ハタリ!」「エル・ドラド」と、ジョン・ウェインとのコンビで西部劇等の傑作を次々と放った、巨匠ハワード・ホークス監督にとって、盟友ジョン・ウェインと通算5度目のタッグを組んだ遺作になりましたね。
劇場公開時は、興行的にも批評的にも惨敗を喫してしまい、さすがにハリウッド史上屈指の巨匠でも、年齢による衰えは避けられないかと言われたそうです。
しかし、「腐っても鯛」ならぬ「腐ってもホークス」。
確かに、ホークス&ウェイン・コンビ作の最高峰「リオ・ブラボー」とは比べるべくもない凡作かもしれませんが、それでもなお、ハリウッド伝統の"王道的西部劇"の醍醐味を存分に味わえる、良質なエンターテインメント映画に仕上がっていると思います。
「リオ・ブラボー」と「エル・ドラド」に続く三部作の最終章とされるこの作品は、なるほど前二作と同じく、主人公たちが、保安官事務所に立て籠るという設定を用いていますね。
しかし、大きく違うのは、この作品の保安官ヘンドリクスが、悪者側だということでしょう。
そういうわけで、敵の親玉ケッチャムを人質に、保安官事務所を占拠したマクナリーらは、ボスを奪い返さんとする保安官一味を相手に、攻防戦を演じることになります。
やっぱり、毎回同じことを繰り返すわけにもいきませんからね。
その一方で、軽妙なユーモアとハードなアクションを織り交ぜた、ノリの良い群像活劇という路線は、往時ほどの切れや勢いがないとはいえ、前二作をそのまま踏襲していて、色々な意味で、安心して楽しめる作品に仕上がっていると思います。
若い女性陣から"安全なおじさん"扱いされて、ふてくされるジョン・ウェインもとても可愛いですね。(笑)
当時、既に60代だったジョン・ウェインの動きが、やけに鈍くてアクション・シーンがキツイとか、その相棒コルドナ役に起用されたメキシコの若手トップ俳優のホルヘ・リヴェロに、ウェインと渡り合うほどのカリスマ性がないとか、なんだかんだで敵の一味が、ヘナチョコ過ぎるとか、色々と粗を探せばキリのない作品ではあります。
そもそも、女性のセミヌードが出てくるあたりで、当時の若い観客世代を意識しているものの、それでもアメリカン・ニューシネマ全盛の時代に、この作品のような、"王道的西部劇路線"は、古臭く感じられたはずで、恐らく興行的・批評的な不振の原因は、その辺にもあったのでしょう。
脇役陣で光っているのは、飲んだくれのクレイジーなフィリップス老人を嬉々として演じているジャック・イーラム。
「リオ・ブラボー」のウォルター・ブレナンに相当する役柄ですが、西部劇の個性的な悪役俳優として鳴らした、ジャック・イーラムの芸達者ぶりが実に面白い。
敵陣へ侵入した際に、門番を片付けたフィリップス老人の「代わりに天国の門へ送ってやった」というセリフは、けだし名言ですね。(笑)
これが初の大役で、「おもいでの夏」で私を虜にしたジェニファー・オニールも、鼻っ柱の強い女性シャスタを好演していると思います。
ジョン・ウェインの盟友ロバート・ミッチャムの息子クリストファー・ミッチャムは、「チザム」や「100万ドルの決斗」でも共演しており、恐らくデュークは、映画界の後見人として後押ししていたのだろうが、残念ながら期待されたほどのスターにはなれませんでしたね。
なお、顔面に傷を負ってセミヌードまで披露するアメリータ役のシェリー・ランシングは、その後、20世紀フォックスの製作部長やパラマウントのCEOを歴任して、ハリウッド史上、最初の女性モーグルになりましたね。
また、ジョン・カーペンター監督作の常連俳優ピーター・ジェイソンが、冒頭で転落死するマクナリーの部下フォーサイス中尉を演じているのも要注目ですね。