映画ポップコーンの評価
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外国の監督が、日本を舞台にした映画を撮ってもめったに成功しないものだ。 必ず風俗的にチグハグで、ヘンテコなところが出てくるからだ。 だが、この映画「ザ・ヤクザ」は、稀に見る成功作だと言ってもいいと思う。 何しろ監督が「ひとりぼっちの青春」や「追憶」などのシドニー・ポラックだということと、ヤクザ映画(任侠映画)の本家・東映の全面的な協力のおかげで、おかしな失敗をしないですんだと思う。 アメリカで私立探偵をしていたハリー(ロバート・ミッチャム)が、友人のタナー(ブライアン・キース)から、ヤクザの東野(岡田英次)に誘拐された娘を取り戻してくれと頼まれて来日し、終戦の頃に愛し合った英子(岸恵子)と再会する。 彼女の兄だという健(高倉健)は、ヤクザの足を洗い、京都で剣道の師範をしているが、昔、英子がハリーに救われた"義理"を返すために協力を約束する。 ハリーと健は、タナーがつけてよこした若い用心棒のダスティ(リチャード・ジョーダン)も加えて行動を起こし、タナーの娘の奪還に成功する。 その結果、健もハリーも東野一味から狙われることになり、健の兄で全国ヤクザの長老格の五郎(ジェームズ繁田)を苦しい立場に立たせることになる。 シドニー・ポラック監督は、古めかしいフジヤマ・ゲイシャ的なイメージにこだわらず、1970年代当時の日本の自然な風俗の中で、物語を進めていて、安直なアクション映画のタッチではなく、腰を据えたドラマの味を出していると思う。 京都の大学の講師だった五年間に、ヤクザ映画の熱狂的なファンになったというポール・シュレーダーの原作もなかなかうまく出来ており、タナーが東野に密売する銃器の前払金を使い込んで、銃器を渡せなくなったため、娘を誘拐されたことがわかってから、場面は急テンポで緊迫の度を増していく。 そして、東野に脅かされたタナーが、ハリーの暗殺を企てたりしたあげく、ハリーが健と二人で、東野の邸へなぐり込みをかけるクライマックスへと至る。 健さんは日本刀、ミッチャムはショットガンと拳銃で暴れるこの修羅場は、カメラ・アングルにも工夫を凝らした、見応えのある一幕で、岡崎宏三の撮影が光っている。 健はこの乱戦で、東野の子分だった五郎の息子を殺す羽目になったため、指を詰める。 そして、健が実は英子の兄ではなく夫なのに、恩義のために自分たちの関係を隠していたという事情を知ったハリーも、侘びのしるしに指を詰めて健に送る。 "義理"というものが、本家の東映の映画より、合理的によくわかるのが面白い。 健さんも、ミッチャムも好演で、真の友情が生まれる経過がよく出ており、英語と日本語のまぜかたも上手くいっている。 そして、岸恵子もこの二人のバランスに相応しい配役だったと思う。
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