大人の鑑賞に耐え得る痛快エンタメ活劇
2025年4月30日 07時57分
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総合評価:
4.0
日本の新聞は、インテリが作ってヤクザが売るという、字幕に先導されて始まる、東映の「社葬」は、大人の鑑賞に耐え得る痛快エンタメ活劇だと思います。
この映画を活劇というのは、少しオーバーかも知れませんが、大新聞社のトップの座をめぐる首脳陣たちの仁義なき戦いは、ヤクザ抗争そっちのけの凄まじさで、虚々実々、魑魅魍魎の世界ですね。
斬った張ったのヤクザ映画など、この映画の前では、まるで子供の喧嘩に思えてきます。
この映画を観終えて、ふと思いました。ひょっとしたら、この映画の製作者たちは、日本の新聞は、ヤクザが作ってヤクザが売るとでも言いたかったのではないかと。
確かに現在の新聞は、どの新聞も政府による大本営発表の記事を垂れ流すだけの代物に成り下がっていますからね。
ジャーナリズムの本義を失くしてしまった現在の新聞は、いずれ消滅する運命にあると思いますね。
とにかく松田寛夫の脚本の面白さには、舌を巻きました。
おびただしい登場人物を強烈なキャラクターで色分けしつつ、どの人物にもきちんと伏線を配し、最後にはハメ絵のようにピタッとその場所に納めてしまう。
しかも、すこぶる明快で、その上、笑いもサスペンスも濡れ場もたっぷりあって、もう見ていてワクワクしますね。
現実の政治家たちの派閥争いから、町内会の会長さん選びにまで共通する、生々しい駆け引きは、二転、三転、そしてドンデン返し。
まさに毒も実もある小気味良さ。
出番はわずかですが、緒形拳の妻役の吉田日出子が実にチャーミングで、多彩な俳優陣もみな達者。
この新聞社のモデル探しも気になるところですが、「新聞は内容ではない、販売部数だ!!」と叫ぶ、新聞人の言葉には、新聞人の本音が表現されていて納得しますね。