チザム
ジョン・ウェイン主演で、西部開拓時代の英雄ジョン・シンプソン・チザムの活躍を描く西部劇。監督は「シェナンドー河」「大いなる男たち」のアンドリュー・V・マクラグレン。1878年。ニューメキシコ。広大な牧畜王国を築き、“ペコスの王者”の異名を持つジョン・シンプソン・チザム。一方、町で急速に台頭していたローレンス・マーフィーは、数々の悪質な手口でその勢力を拡大していく。やがて、両者は激しい抗争を繰り広げるのだった。
この映画「チザム」は、西部劇の王者ジョン・ウェインが「勇気ある追跡」でアカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞後の初めての作品で、当時62歳のジョン・ウェインはすこぶる元気がいい。 西部史に名高いリンカーン郡戦争の中、ニューメキシコの広大な原野に牧畜王国を築き上げ、冒険と波乱の生涯を送ったチザム(ジョン・ウェイン)の実録の映画化作品だ。 チザムの親友のジェームズ・ペッパーにベン・ジョンソン、彼らと対立する黒幕の親分ローレンス・フィーにフォレスト・タッカー、連邦保安官パット・ギャレットにグレン・コーベット、無法者ビリー・ザ・キッドにジョフリー・デュエルという配役で、西部劇ファンとしては嬉しくなる顔ぶれだ。 この映画は銃撃戦やスタンピードという牛の大暴走などの見せ場も多く、西部開拓史上に名高い人物たち、特に、後に宿命の対決をすることになる無法者ビリー・ザ・キッドと名保安官パット・ギャレットの若き日の姿(といってもビリー・ザ・キッドは21歳でその生涯を閉じた)が、描かれているのも興味深い。 しかも、ビリー・ザ・キッドと言えば、左ききのガンマンとして有名だが、この映画では史上初めて右ききで登場してくる。 彼の写真が実は裏焼きだったので、ずっと左ききだとされてきたが、右ききが本当だったのだ。 かつて二挺拳銃のジョニー・マック・ブラウンをはじめ、ロバート・テイラー、オーディー・マーフィー、ポール・ニューマンと、歴代の左ききのビリーはみな魅力的だったが、それだけに、この映画の右ききのジョフリー・デュエルが扮しているビリーが少し見劣りするのは仕方がないだろうと思う。 この映画は実録とは謳っているが、実説とはかなり違っているものの、とにかく、牛の大暴走場面あり、ガン・プレイあり----と、西部劇ならではの見せ場を次々と盛り込むサービスぶりで、かなり爽快感が味わえるのは確かだ。 ベテランのアンドリュー・V・マクラグレン監督が悠々たるタッチで西部劇の楽しさ、面白さを詰め込んだ作品になっていると思う。
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