俊英マイケル・ウィナー監督のスパイ映画の佳作
2024年2月9日 10時47分
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総合評価:
4.0
この俊英マイケル・ウィナー監督の「スコルピオ」は、バート・ランカスター、アラン・ドロンの二大スターに演技派のポール・スコフィールドが絡む、ストリーリーよりも役者の魅力で見せるスパイ映画の佳作だ。
殺し屋スコルピオ(アラン・ドロン)は、親友のベテランCIA情報部員クロス(バート・ランカスター)から、中東の某国首相の暗殺を依頼される。ところが、クロスは二重スパイだった------。
そして、勝手に引退を決め込んだクロスの暗殺を、CIAから依頼されたのは、彼の元相棒のスコルピオだった------。
友情や愛情さえも押しつぶしていく非情なスパイ戦を、マイケル・ウィナー監督が硬質なタッチで描いていく。
このようなストーリーは、スパイ映画としては定番のプロットで、この映画が公開された1970年代にしても、新鮮味には乏しかったのではないかと思う。
だが、逃げるベテランのバート・ランカスターと、それを追う現役バリバリのアラン・ドロンという顔合わせは、両者が初共演したルキノ・ヴィスコンティ監督の「山猫」より遥かにスリリングで魅力的だ。
非情な組織に翻弄される男の悲哀を、ランカスターとドロンの二人の俳優が、それぞれにいい感じのムードを醸し出していて、実に素晴らしい。
初めてこの映画を観た時は、よくある話をキャスティングで見せる映画だと感じたが、観直してみると、それほど単純ではないことに気づく。
無骨顔の熱いヤツと、二枚目でクールなヤツという風貌だけで分けず、行動力や頭のキレが互角で似たタイプの二人が、相手の出方を予測しながら行動する、"丁々発止の心理戦"がスリリングで、ビターなラストも実に印象的だ。
この映画には昨今のスパイ物にはない、翳りや悲哀、漢涙を搾り取られる快感があるのだ。
1970年代の男気映画の基本テイストが、そこには紛れもなくあるのだ。