コットンクラブ
20年代、ハーレムのクラブではエリントン楽団の留守にキャブ・キャロウェイが人気を博し、ニコラス兄弟が華麗なタップを披露していた……。マフィアの抗争をジャズに乗せて鮮やかに描く。
このフランシス・フォード・コッポラ監督の「コットンクラブ」は、とことんファッショナブルな映画だと思います。 この映画で描かれている時代は、1920年代から1930年代への変わり目の頃。 "ジャズエイジ"とも、"アスピリンエイジ"とも呼ばれるこの時代ほど、アメリカが、そしてニューヨークが、クレージーな魅惑に輝いた時代はないだろうと思います。 それはジャズの、タップダンスの映画の、ギャングのイエロージャーナリズムの、スキャンダルのアール・デコの時代だった。 あらゆる"モダン"の源泉とも言うべき時代だった。 現代的な都市が完成され、その風俗が新しい"美"と"病気"とを顕わにした時代だったと思います。 私は心情的に、なぜかこの時代に惹きつけられてしまうのですが、それはこの時代の風俗の中に、今の我々の"美意識"や"生活感覚の原型"を感じとっているせいかも知れません。 そして、今よりもっと尖鋭で純粋な形で、今の我々の"美"と"病気"の原型を感じとっているせいかも知れません。 現在の視点から見ても、この時代はオンリーイエスタディの近さで私を惹きつけてしまうんですね。 そして、この映画「コットンクラブ」には、この時代の風俗がサービス精神たっぷりに描かれているんですね。 この時代の風俗の魅惑を偏執的なまでに再現すること----、これがこの映画の唯一のテーマであり、他には何もないと思うくらいです。 物語の中心になっている、ディキシー(リチャード・ギア)とヴェラ(ダイアン・レイン)の恋ですら、ひとつの風俗として扱われているにすぎない気がします。 ディキシーもヴェラもリアルな人間としてではなく、ひとつの"時代の典型"として描かれているにすぎないからです。 ヴェラなどは、まさに絵に描いたような1920年代のゴールド・ディッガーだ。 そういう意味から、この映画はとことんファッショナブルな映画なのだと思います。 当然、コスチュームも当時の再現に努めていて、コスチューム担当は、スタンリー・キューブリック監督の名作「バリー・リンドン」、アカデミー作品賞を受賞した名作「炎のランナー」で、既にアカデミー衣装デザイン賞を受賞しているミレナ・カノネロ。 そして、ヴェラの着たドレスは、全て当時のもので、ハリウッドに保存していたものの中から選んだのだそうだ。 チャイルディッシュな1920年代ファッションから、フェミニンな1930年代ファッションへ----、時代色を最も鮮明にしているのは、ヴェラの髪型の変化だ。 1920年代末には黒髪のショートボブだったのが、途中ウェーブヘアを経て、1930年代に入った途端、プラチナ・ブロンドに変っている。 この変化は、とても重要だと思います。 未成熟で不安定な女の魅力がクローズアップされた1920年代、断髪と短いスカートは、ファッションの象徴だったと思います。 そして、独特の断髪で、当時人気を集めていたのが、女優のルイーズ・ブルックス、愛称ルルだった。 日本のモダンガール(モガ)たちも、"ブルックス刈り"といって、この髪型を真似したほど、ルル風の断髪が大流行したそうだ。 そして、1930年代に入ると、まるで1920年代の反動のように、成熟した女らしさが求められるようになり、そして、なぜかブロンドがもてはやされるようになるんですね。 その証拠に、1930年代を代表する人気女優の多くは、このブロンドだった。 グレタ・ガルボもマレーネ・ディートリッヒもキャロル・ロンバードも--------。 とりわけジーン・ハーローは、そのスキャンダラスな生涯と共に、輝くばかりのプラチナ・ブロンドによって、名作には全く出演していないのにもかかわらず、1930年代を象徴するスターになりましたね。 なぜ1930年代にブロンドが人々の心を惹きつけたのか、黒髪一色の日本人には、よくわからないところがありますが、恐らく、ブロンドの持つ優美さやファンタスティックな官能性が、1930年代のアメリカ社会の気分にアピールしたのかも知れません。 あるいは、ブロンドが黄金を連想させ、不況と政治不安の1930年代の憧れをかき立てたのかも知れません。 黒いボブヘアのヴェラのかなたには、1920年代のルルの姿が、そしてプラチナ・ブロンドのヴェラのかなたには、1930年代のジーン・ハーローの姿が重なって見えてきます。 そして、重層的に当時の、"時代の気分"を楽しむことが出来るという仕掛けに、この映画はなっていると思います。 この映画「コットンクラブ」は、ヒロインの髪型に象徴されるように、"あの時代"への熱い思い入れが感じられる、"華麗な風俗プリズム"になっていると思います。
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