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「人間の欲望と愛欲と孤独とが複雑に絡み合い、破綻の悲劇へと追い詰められていくドラマ」 帰らざる夜明け dreamerさんの映画レビュー

帰らざる夜明け The Widow Couderc

人間の欲望と愛欲と孤独とが複雑に絡み合い、破綻の悲劇へと追い詰められていくドラマ

2024年5月3日 13時00分 役立ち度:0人
総合評価: 4.0
1930年代の中頃、フランス中部の緑の田園地帯が背景で、田舎道を走るバスから中年の農家の女タティ・クーデルク(シモーヌ・シニョレ)が降り立ちます。

重い荷物を引きずって、通りかかった若者が手を貸して、それが縁でジャンと名乗る旅の若者(アラン・ドロン)は、彼女の家の野良仕事の手伝いをするために雇われる事になります。

このフランスの名女優シモーヌ・シニョレが演じる、女中あがりの後家さんは、十数年前に主家の父親に手ごめにされ、その息子にはらまされて死産。

そして、その息子と結婚したけれども、飲んだくれの亭主は死に、残った舅のアンリ爺さん(ジャン・ティシェ)が今も年がいもなく夜な夜な彼女を求めて来るのだった。

その彼女が舅を「いやらしい老いぼれめ」と罵れば、運河の跳ね橋を挟んで住む、亡夫の妹夫婦は老父を抱き込んで、彼女が支えてきた農場を横取りしようと狙っている。

そうはさせじと、肩ひじ張って後家の頑張りを、シモーヌ・シニョレが、がさつな動作で絶妙に演じてみせる。
この映画の主役は、実質、このシモーヌ・シニョレだと言えます。

やがて判明するジャンの正体は、殺人を犯して追われる身の医学生くずれですが、そんな若者が行きずりの年上の女の痛ましさに、ふと心惹かれ、彼女もまた、その優しさにすがって、女としての最後の炎を燃やします。
だが、ジャンは、彼女の義妹夫婦の娘で、まだ16歳の若さで父無し子をかかえたフェリシーとも、抱き合ってしまいます。

結局、フェリシーの両親は、兄嫁のタティ・クーデルクを憎むあまり、ジャンにも敵意を重ね、彼の秘密をかぎとると、娘に命じてパスポートを盗ませ、それを持って警察に密告します。

映画のラストは、警察官の大掛かりな包囲で、逃れきれぬと悟ったジャンは、未亡人のタティ・クーデルクをかばって射殺され、彼女もまた、流れ弾を受け、燃えさかる家の中で息絶えるのです。

あまりにも、むごすぎる悲劇ですが、映画はむしろ一つの風景の中の出来事として、淡々と描いています。
運河があり、機帆船が通り、跳ね橋が上下する、その古風でのどかなロケーションが実に素晴らしい効果を上げていると思います。

ささやかな地域社会の、まだささやかな片隅にも、人間の欲望と愛欲と孤独とが複雑に絡み合って、破綻の悲劇へと追い詰められていく、この物静かなニヒリズムがとてもいいと思います。
詳細評価
  • 物語
  • 配役
  • 映像
  • 演出
  • 音楽
イメージワード
  • ・切ない
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