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「ウォーレン・ベイティが製作・監督・脚本・主演の四役をこなして撮った力作」 レッズ dreamerさんの映画レビュー

レッズ REDS

ウォーレン・ベイティが製作・監督・脚本・主演の四役をこなして撮った力作

2025年4月21日 22時29分 役立ち度:0人
総合評価: 4.0
この映画「レッズ」は、公開当時、ハリウッドを代表するスターだったウォーレン・ベイティが製作・監督・脚本・主演の四役をこなして撮った力作で、第一次世界大戦からロシア革命にかけての1910年代、アメリカで"レッズ"と呼ばれた過激左派の指導者であり、有名なジャーナリストでもあった、ジョン・リードの生きざまを描いた作品ですね。

この異色作ともいえる作品は、当時のアカデミー賞で11部門にノミネートされましたが、最優秀監督賞(ウォーレン・ベイティ)、最優秀助演女優賞(モーリン・スティプルトン)、最優秀撮影賞(ヴイットリオ・ストラッロ)の三つの受賞にとどまり、ハリウッドの体質的な限界を示したと言われていました。

しかし、当時のレーガン大統領の共和党の保守政権の時代に、アメリカで史上初めて共産主義を主題としたこの映画が、興業的に成功している事は、アメリカの政治と文化の多様性と幅の広さ、懐の深さを示すものとして、非常に興味深いものがあると思います。

インターナショナルの大合唱が響き渡るこの映画が、本当にアメリカ映画だとは、到底、信じられない気さえしてきます。

ロシアの群衆を前に、ジョン・リード(ウォーレン・ベイティ)が、アメリカの労働者の支援を叫ぶ場面は、この映画の山場の一つであり、現在のアメリカ人には想像もできない状況だと思いますが、レーガン大統領がウォーレン・ベイティと相手役のダイアン・キートンをホワイト・ハウスに招いて、この"赤い映画"を鑑賞したといいますから、レーガン大統領の度量の大きさには驚いてしまいます。

この映画で製作・監督・脚本・主演の四役をこなしたウォーレン・ベイティにとって、この作品は彼そのものであり、行動的な文化人ジョン・リードの中に、自分自身を発見して、没入しているのかも知れません。

リードは左翼誌「ザ・マッセズ」の記者として、1917年にロシアに入り、十月革命のボルシェビキ蜂起に遭遇する事になります。
彼の名作と言われる「世界をゆるがした十日間」は、その時の体験をもとに書かれたもので、不朽のルポルタージュとして今日まで残っています。

そして、彼は帰国後、アメリカ統一共産党の幹部となり、ペテログラードでのコミンテルン第二回大会や、南ロシアのバクーでの東方民族大会にアメリカ代表として出席したりしますが、1920年10月17日にモスクワで33歳を前にした若さで客死する事になります。

レーニンに、「君はアメリカ人民のアメリカ人か?」と聞かれて、「イエス」と答えた彼は、「赤い広場」に葬られている唯一人のアメリカ人となったのです。

ウォーレン・ベイティは、1967年に作った「俺たちに明日はない」で成功した後のソビエト旅行で、この"赤いジャーナリスト"に関心をそそられて、それから彼の関係資料の調査や、32人に及ぶ関係者へのインタビューを行なって、この映画の製作に取り掛かったと語っています。

この映画が完成したのは着想以来、実に15年、製作費80億円を費やして完全主義を貫徹したのです。

公開当時、ハリウッド映画界で、"最もセクシーな男"と言われていたベイティですが、彼の中には強靭な意志と高い理想とが潜んでおり、ジョン・リードと共通する何かを感じてしまいます。

ウォーレン・ベイティがこの映画「レッズ」を製作した意図は、アメリカではあまり知られていないロシア革命が、「アメリカの理想主義者にどのような影響を与えたか」であり、そして、リードがインテリらしい理性的な反応ではなく、真実に近づくために実際に行動した、「彼の理想主義の在り方に興味があった」と語っています。

そして、リードの愛人であり、妻であり、同志でもあったルイズ・ブライアントに扮するダイアン・キートンは、当時「アニー・ホール」でアカデミー主演女優賞を受賞して、彼女の絶頂期でしたが、この映画でもウォーレン・ベイティと互角にぶつかる彼女の個性的な力演は、ウーマン・リブの先駆者だったと言われているルイズの"激しい自我"を、非常にうまく体現していたと思います。

このルイズは裕福な歯科医の妻でり、地方紙の記者でしたが、帰郷したリードに魅せられ、夫を捨ててグリニッジ・ヴィレッジのボヘミアンとなり、劇作家のユージン・オニール(ジャック・ニコルソン)と三角関係に陥るが、女性記者として男女同権と女性の自立を求めてやまなかった激情の人でした。

そして、リードと共にロシア革命を取材しましたが、感情的な対立と長い別離、そして苦難の旅の後、モスクワ駅でやっと再会する事が出来たのです。

彼女はその後、リードの最後を看取り、その後も新聞記者を続け、アメリカの外交官と再婚しますが、その後、離別されてヴィレッジに戻り、最後はパリでひとり淋しく死んでいきますが、女性解放のパイオニアの晩年は悲惨だったと言われています。

彼女にとって、リードとの短くも激情的な想い出はいつまでも鮮烈に生き続け、彼女の後半生を灰のように燃え尽くしてしまったのかも知れません。

革命の人波と合唱の中で昂揚した二人の愛は、"赤い火花"のように散って、二度と再び帰らなかったのです。

人生の劇的な意味は、リードの短く激烈なものよりも、むしろ残されたルイズの"暗い余生"にあるようにも思えます。

そして、アメリカの"レッズ"は、彼女のように懐古的なものに風化してしまったといえるのかも知れません。

関係者の一人、故ヘンリー・ミラーは、「我々は皆、悩みを抱えている。そこから全人類を救おうなんて、キリストにも出来ない話さ。そのためにキリストは十字架に掛けられたじゃないか」と語っていて、この言葉がいつまでも、余韻を持って心に残ってしまいます。
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