魚が出てきた日
この映画「魚が出てきた日」は、「その男ゾルバ」「エレクトラ」等で知られるギリシャ出身のマイケル・カコヤニス監督の問題作ですね。 この映画の冒頭、スペインのフラメンコダンサーが登場して「原爆が落ちるのはスペインだけとは限らない」みたいな歌を唄います。 そして、舞台はギリシャの貧しい島に移り、その上空で爆撃機がトラブルを起こし、トム・コートネイとコリン・ブレイクリーのパイロットは、積荷の核爆弾2基、高濃度の放射性物質を閉じ込めた金属製の箱をパラシュートで落下させ、自分たちもその後を追って飛び降りるのです。 この件は、1966年1月17日、スペインのパロマレスという村の上空で、4基の核爆弾を搭載した米軍のB-52が事故を起こしたが、爆弾はパラシュートで落としたため、事無きを得たという事件が、実際に発生していたんですね。 この1年後に、その事件をいち早く頂戴して、近未来を舞台にSFブラックコメディに仕立てたのが、この「魚が出てきた日」なんですね。 二人のパイロットは、当局と連絡を取ろうと右往左往。 違うルートで墜落の情報を得た当局の連中は、ホテル業者を装って島に乗り込み、開発という触れ込みで、島の一部を買い取り、爆弾と金属の箱探し。 どうにか2基の爆弾は回収出来たが、最もヤバイ金属の箱がどうしても見つからない。 では、その箱はというと、貧乏な羊飼いの夫婦がこの箱を発見し、お宝に違いないと思い、こっそりと家に持ち帰り、あらゆる手を尽くして開けようとしていたのだ--------。 真っ赤に日焼けし、パンツ一枚の姿でお腹を空かして、うろうろする二人のパイロット。 ド派手なリゾートファッションに身を包み、その状況をエンジョイするホテル業者に化けた兵士たち。 そんな彼らの出現に、島の未来を確信して浮かれまくる村人たち。 新しいリゾート地登場という情報を得て、徒党を組んで詰めかける観光客-----そんな様子が過剰過ぎるほどデフォルメされたマイケル・カコヤニス監督の演出で描かれていきます。 一応、舞台が近未来なので、衣装も未来仕様だが、今見るとシルク・ドゥ・ソレイユっぽいサーカス風で、派手過ぎて滑稽なくらいだ。 こういう描写が長いので正直、観ていて疲れるのだが、羊飼いがひょんなことから金属の箱を開ける方法を見つけたあたりから、そういう疲れが吹き飛ぶような展開が待っている。 とりわけ、原発事故が継続中の今の日本では、この展開はあまりにも怖すぎますね。
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