成長するのをやめた!何やら不穏な名作映画
2020年9月14日 13時22分
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総合評価:
4.0
ナチスドイツが台頭するドイツに生まれた少年・オスカルは内向的な少年。そんな彼は自分の目を通して世界を見たときに、「大人になるのは良くない」と判断。永遠に成長しないことを彼は決め、同時に叫ぶとガラスを割るという能力を手に入れます。
戦争下のドイツの描写と、それに傾倒するオスカルの父、不倫に走る母。こんな世界を見ていたらそりゃあ成長しないでいたほうがいいかな、と考えるでしょう。「ブリキの太鼓」を買ってくれるから、とりあえずオスカルは父のために3歳までは成長します。しかし、それ以上成長する気はありません。
画面が常にいっぱいで、息苦しい感じがオスカルでなくても伝わってきます。超能力らしきものを持っているオスカルですが、特にそれを活かすこともなく、好きな女性と出会って成長を開始すれば、脳だけ成長して身体は子どものままという皮肉さ。
それなのに性交渉しようとするオスカルは、悲しく滑稽な人物です。
どれほどナチに傾倒しようと、不倫に走ろうと、結局は己自身の弱さや罪悪感から逃れることは出来ません。オスカルを含め、人間は全員不器用。性的描写が多く、一部の地域などでは上映不可能とされていますが、現在は問題なく視聴できます。
とにかく不思議な魅力があります。3歳にして心が成熟しきってしまったオスカル。この冷淡な性格のため多くのものを失ってしまいますが、われわれもまた、オスカルのように大きな問題を避け、いつまでも子どもでいたいと考えてしまうものです。