カリフォルニア・スイート
いかにもアメリカ的な映画「カリフォルニア・スイート」は、「グッバイ・ガール」のニール・サイモンの脚本、ハーバート・ロスの監督作品。 男と女の、そして人間の感情の揺れ動きを、まるで洪水のようなセリフの連続で鮮やかに捉える。 ロサンゼルスでも超一流のビバリーヒルズ・ホテル。 ここに宿泊している人々のドラマが、全く別々に並行して描かれる。 ジェーン・フォンダは、子供をどちらが育てるかで、元の夫と丁々発止。 マギー・スミスは、アカデミー賞の授賞式にやって来た、受賞候補の女優で、ドキドキ、イライラで、夫のマイケル・ケインに当たり散らす。 一方、女房より一日早く到着したウォルター・マッソーは、兄貴が差し入れた美女と浮気をして、奥さんに隠そうと大騒ぎ。 これらの中でも、ジェーン・フォンダとマギー・スミスのエピソードが心に残る。 皮肉いっぱいに突っ張って、子供を自分の手元に置こうとしていたジェーン・フォンダ。 夫が身を引こうとする瞬間に、あなたに預けるわと言ってしまう。 夫の優しさがわかったからなのだ。 そして、淋しく帰ろうとする彼女を追って、娘が見送りに駆けつける。 泣かせる。とにかく、ジェーン・フォンダが素晴らしい。 まさに、女の演技、母の演技。見事だ。 マギー・スミスは、結局、アカデミー賞を受賞できない。 現実には、この映画での演技で、アカデミー助演女優賞を受賞するのだが。 荒れる彼女をじっと、温かく見守ってやる夫。 マギー・スミスは、本当にうまいなあと思う。 彼女自身が、モデルのような役柄だから、堂々と絢爛と、楽しみながら演じたに違いありません。 人生というのは、こんな風に甘くて、切なくて、哀しいものなのだ。 だけど、いいじゃないか、楽しくやろうよ、明日があるんだもの。 明日がくれば、また新しい希望が湧いてくるさ。 この映画の製作スタッフは、そんなアメリカ的なカラッと乾いた、優しい声が聞こえるような映画なのだ。 だから、私は好きですね、この映画が。
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