見る者をも酩酊させる怪作
このレビューにはネタバレが含まれています
2021年2月14日 21時51分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
鑑賞後、確実にビールが飲みたくなる作品です。
物語の舞台も、登場人物の言動も、酒の飲み方ですら汚く不快な描写なのに、なぜか嫌いになれない、見ればこちらも飲みたくなってしまう、不思議な魅力をもっています。
主人公が、立ち寄っただけの田舎町に絡みとられ、あれよあれよという間に深みにはまりこんでしまう展開なのですが、荒野(オーストラリア内陸部の砂漠地帯、通称アウトバック)ならではの閉塞感・暑苦しさ・不衛生さ・住人の近すぎる距離感が見る者をも圧迫してきます。
さらに果てしなく続く飲酒、その後の酩酊…その空気感は画面越しに匂ってきそうなほどです。しかしそれでいて、あまりの乱痴気騒ぎにどこか羨ましさを感じるのも事実です。
特に、ジャケット等でメインビジュアルとなっている名優ドナルド・プレザンスが怪演する人物のブッ飛び具合がまた楽しく、強烈な印象を残します。
ただ、この作品を語るうえで何かと問題になっているのが、カンガルー狩りのシーンで、動物愛護の観点から、私もここはやり過ぎだと思いますので減点です。
ラストについては、田舎を訪れた旅人がとことん酷い目にあう話、と思いきや、主人公が「町から出られないように嵌められた」と誤解していただけで、町の人々は純粋に好意を持ってもてなしていただけだった、という意外性のあるものでした。実は都会と田舎のカルチャーギャップによるすれ違いだったんですね。