忘れられない作品です
このレビューにはネタバレが含まれています
2020年7月21日 16時45分
役立ち度:0人
総合評価:
4.0
この先答えが出る事のないものに立ち向かう苦しさや儚さが詰まっている作品でした。西川美和監督特有の撮り方なのかもしれませんが、子役の二人が常に自然体で、演技をしているという様に見えないシーンが多々ありました。
交通事故で妻を亡くした小説家と、同じくその事故で妻と共に事故で亡くなった友人の家族との交流という重たいテーマなのに、暗くなりすぎることなく描かれており、本木さんや竹原さんの演技もどこかコミカルで良かったです。
本木さん演じる小説家衣笠幸夫は、妻が亡くなる以前から夫婦間が冷め切っており、亡くなった妻に対して悲しみが沸いてくる事ない事に苦しんでいました。
一方で、竹原さん演じる陽一は最愛の妻を亡くし、その日から時が止まってしまったように憔悴しながら日々を過ごしていました。同じように妻を亡くした二人が妻に対して全く違う感情を持ちながらも、交流する日々を描くストーリーです。
長年連れ添った相手が亡くなっても悲しむ事が出来ない苛立ち、最愛の相手を失って失意の底から上がって来られない苦しさ、そして、母という絶対的な存在を失い、それでも現実を必死に受け止め、前に進もうとする強さ。残された人達のそれぞれの思いが交錯し重なり合う姿に心を打たれました。