怒り
八王子で起きた凄惨(せいさん)な殺人事件の現場には「怒」の血文字が残され、事件から1年が経過しても未解決のままだった。洋平(渡辺謙)と娘の愛子(宮崎あおい)が暮らす千葉の漁港で田代(松山ケンイチ)と名乗る青年が働き始め、やがて彼は愛子と恋仲になる。洋平は娘の幸せを願うも前歴不詳の田代の素性に不安を抱いていた折り、ニュースで報じられる八王子の殺人事件の続報に目が留まり……。
吉田修一作品はやはり人間味あふれていて素晴らしいです。 原作と映画監督のファンなのでみました。 過去に起きた一つの未解決事件をめぐり、それぞれが自分のそばにいる人を疑い始める物語ですが、みんなどのような環境に置かれようと、どんなに不安でも、やはり愛情は捨てきれないのだなと。どうすればいいのかわからない状況下でいろいろ悩みながらも、ずっと相手のことを想っている、とてつもない人たちだと思いました。深い「愛」の話でした。 また問題提起も多く盛り込まれています。私たちが普段生活する中であまり深く考えていないようなことについて、目をそらさずにまっすぐ向き合わなければならない、と強制的に直視させられるような。それに対する私たちの感覚はこの映画の冒頭までの広瀬すずさんくらいのノリだったと思います。 名優ぞろいな点も素晴らしい。疑われるサイドの松山ケンイチさん、綾野剛さん、森山未來さん、軸となる渡辺謙さんに宮崎あおいさん、妻夫木聡さんはもちろんのこと、この映画を観るまでは存じ上げなかった佐久本宝さんは最も存在感のある役者さんだと思いました。なんでもこの映画への出演はオーディションで決まったのだとか。初出演でこの演技、すごすぎます。
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