荒野の七人
無法者の被害に嘆くメキシコの寂れた田舎町では、用心棒を雇うことになり、クリス(ユル・ブリンナー)をリーダーとしてヴィン(スティーブ・マックィーン)やブリット(ジェームズ・コバーン)ら7人のガンマンが集結した。農民に自衛の策を教えるなどし、襲撃に備えるが……。
エルマー・バーンスタインの軽快でダイナミックな心躍らせる、この「荒野の七人」のオープニングのテーマ曲は、「大いなる西部」「アラビアのロレンス」と並んで、"これから何かとてつもなく面白い事が始まるぞ"という予感を、いつ聴いても感じさせてくれます。 この映画「荒野の七人」は、黒澤明監督の「七人の侍」に惚れ込んだユル・ブリンナーが翻訳権を買い取り、「七人の侍」へのオマージュとリスペクトを捧げて、舞台をメキシコに設定して映画化した西部劇の痛快作です。 この映画のタイトルにきちんと、"東宝映画「七人の侍」より"と、クレジットされていて、本家の「七人の侍」のような重厚さこそありませんが、アクションの見せ場がふんだんに用意された、映画史に残る、上質の娯楽作品だと思います。 農民のために野盗の群れと戦う七人のガンマンには、まず、リーダー格のクリスに黒ずくめの服がピタッと決まって、リーダーの風格漂う精悍なユル・ブリンナー(「七人の侍」の志村喬の役)。クリスの片腕的存在の参謀役のビンに、ユル・ブリンナー以上のカリスマ的な存在感を示すスティーヴ・マックィーン(稲葉義男の役)。 無口なナイフ投げの名手ブリットに、粋でダンディーなジェームズ・コバーン(宮口精二の役)。 インテリくずれのニヒルなリーに、ロバート・ヴォーン(新しく作られた役)。 可愛い子供たちの身代わりになって、壮烈な戦死を遂げる、子供好きのメキシコ男ライリーに、チャールズ・ブロンソン(千秋実の役)。 金しか頭にない曲者ハリーに、ブラッド・デクスター(加東大介の役)。 そして、七人のうちで一番若い、血の気の多いチコに、ドイツ映画界から招かれたドイツのジェームズ・ディーンことホルスト・ブッフホルツ(三船敏郎と木村功を一緒にした役)。 マックィーンもコバーンもブロンソンも当時の映画界ではまだ新人で、この映画が彼らにとってブレークするきっかけとなった作品で、文字通りの出世作になったのです。 華麗で見事なショット・ガンさばきを見せるマックィーンと、セリフらしいセリフは一言もないナイフ使いのコバーンと、朴訥な中にも男の渋さと哀愁を感じさせたブロンソンは、特に我々映画ファンに強烈な印象を残してくれました。 監督は「OK牧場の決闘」「ゴーストタウンの決闘」など西部劇の痛快作を数多く手がけているジョン・スタージェス。 この監督はなぜか汽車の好きな監督で、自分の映画に必ずと言っていい程、汽車を登場させていますが、この映画にもSLを使っているシーンが出て来ます。 従来の西部劇がひとりの強いヒーローを主人公にしていたのに対して、この映画は七人の集団グループを主人公にしたところが新鮮で、その後の西部劇の映画史の流れの中で、新しいタイプを作ったと言えるかも知れません。 この映画は世界的にも大ヒットを記録し、以後、このシリーズは4作目まで作られる事になるのです。 当時としては珍しいメキシコ・ロケの作品で、メキシコの乾いた風景がこの映画の雰囲気に、実によくマッチしていたと思います。 仇役は名門アクターズ・スタジオ出身の名優イーライ・ウォラックとコバーンにナイフで殺される、西部劇ではお馴染みの名脇役ボブ・ウェルキが、憎々しげに悪役を楽しんで演じていたのが印象的でした。 これら七人のガンマンは、野盗との何度かの攻防の末、結局、生き残ったのは、三人のガンマンのみ-。 リーダーのクリスがラストで呟きます。 「勝ったのは俺たちじゃない。百姓だよ」と。
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